仲良い日本の友達たちの中で一番多いのは、3月生まれだ。
日本にいた時は3月生まれの友達と「弥生会」というのを作って、毎年温泉旅行に行っていた。
旅行会社に勤めていた友達夫婦はともに3月生まれ。
旅行が大好きな二人で、国内、海外とよく旅に出かけていた。
嫁のRは海の実家に1度だけ遊びに来たことがある。
県内至る所に温泉がある温泉地で、近いところでは車で10分で行ける。
地元の友人や親を巻き込んで、Rを3ヶ所の温泉に連れて行った。
外国籍で見た目も外人のRと、その当時金髪でよくフィリピン人に間違われた海と2人で温泉に入っていると、あまり人は近づいてこなかった。
そんな二人はいつでも何時間でも温泉を楽しんでいた。
この3月生まれの夫婦と3月生まれの海の前のパートナー、そして海の4人で最後に行ったのは、青森県の蔦温泉。
約1000年前(平安時代)に開湯された秘湯。
青森駅からバスに揺られること約2時間、大自然の中に佇む古くて貫禄のある宿だった。
「温泉が地下からプクプクと湧いてくる温泉だって!!」
温泉大好きな嫁のRと海は、とにかく楽しみにしていた。
蔦温泉の湯は、本当に足元からお湯がプクプクと湧き出てくる。
お湯が生まれてくるという表現の方がピッタリかもしれない。
湯船のお湯が流れてくる板場に寝そべって、2時間楽しんだ。
天井が高くて、まるで露天風呂のような感覚で何時間でも入っていられる。
まだ雪が残るこの時期はお客さんが少なかったので、ほぼ貸し切り状態で楽しめた。
もう20年ほど前の旅なので、お料理の記憶はない。
でも温泉だけは忘れられない。
泊まった翌日の朝には、前の日に男湯だったところが女湯に変わっている入れ替え制の温泉に入った。
立って入って胸のあたりまである、とても深い湯船だった記憶がある。
泉質が最高だった。
「日本で行きたい温泉は?」と聞かれたら、蔦温泉だ。
もう一度行きたい。
実家の母ももちろん温泉好き。
しかもこのころの母は日本全国山歩きに行っていたので、宿の周りで山歩きが楽しめる蔦温泉は、きっと母にとっても最高の場所だと思った。
「お母さん、Rと一緒に行った青森の蔦温泉は最高だったよ。機会があったら行ってみて」
と言ってパンフレットを渡した。
「知ってるよ。行きたいと思っていた温泉なんだよね」
母は山歩きが楽しめる初夏に行ったようだ。
「すごく良かったよ。ちょっと遠すぎるけど、温泉は最高だね」
日本にいた頃は、年に何回かは温泉旅行に行っていた。
実家に帰ると家のお風呂ではなく、温泉に連れて行ってもらっていた。
まだまだ行きたい温泉地はたくさんある。
もう一度行きたい温泉宿もたくさんある。
「日本人に生まれてよかった〜」
温泉に入るとついこんな言葉が出てしまう。
3月になると「弥生会」でRと一緒に行った温泉を思い出す。