6年前、この地へ来たのは農業を勉強するためだった。
1度だけ会って話をしたことがあった農場経営者に連絡をして、勉強させてもらえることになったのだ。
夫婦揃って農業未経験。
仕事を辞めて、新しい土地そして新たな生活にワクワクしていた。
しかしたった1ヶ月半後には、二人とも職なしになってしまった。
それから仕事探しをしたり、日本に出稼ぎに行ったり、生きていくのに必死だった。
先日、どうしても欲しい野菜があって1ヶ月半で辞めた農場に行った。
オーナーと大喧嘩をして辞めてから、初めてのことだ。
日曜日の朝だったので、そのオーナーはいないだろうと思っていたら、敷地に入ったらすぐに彼が立っていた。
「おはようございます。お久しぶりです」
笑顔で挨拶をしてみた。
「どうしたの?何をしにきたの?」
「どうしても欲しい野菜がありまして・・・」
今年の夏に入ったばかりの何も知らないマネージャーが、
「どうぞ、どうぞ。車を好きなところに停めてこちらへ」
自分たちが働いていた時よりも、畑は整備されていた。
話の流れで、マネージャーに自分たちのことを説明しなければならなくなってしまった。
「実は私たちは6年前に少しだけここで働かせてもらっていたんですよ。農業のことを何もしらない素人が、○○さんに楯を突いて大喧嘩をして辞めたのです」
「そうだったんですか・・・」
すると、まさかの言葉が・・・
「あの時は悪いことをしたね」
実は働いていた1ヶ月半、まったくお給料をもらえなかったのだ。
アメリカでは1週間に1度、もしくは2週間に1度お給料が支払われるのが普通だ。
引越しでかなりのお金を使ったので、二人して働いていてしかもお給料をもらえないと生きていけなかった。
貯金なんてなかったからだ。
野菜を購入してから、お互いに簡単な近況報告をした。
そして自分たちの無礼だった態度を謝罪し、感謝の言葉も伝えられた。
今のこの幸せな暮らしのきっかけを作ってくれたのは、彼だからだ。
引越しをしてきてから3年間くらいは経済的にも精神的にもかなり大変だったが、今では懐かしい思い出話になっている。
あの経験があったからこそ、今、笑って暮らしていけるのだ。
「またいつでもいらっしゃいよ」
この言葉が聞けて本当に良かった。
人生の次のステップに進むための、大切な言葉なような気がする。
どんなに辛くて大変なことが起こっても、すべて時間が解決してくれる。
その時、その時を一生懸命生きていけばいいのだ!!