結果のアメリカ プロセスの日本

「最初からそういう風に言ってくれれば良かったのに」

フライトスクールのスケジュールを前日に急に変えられてちょっと不満気味だった夫の空は、納得した様子で帰ってきた。

いつも午前10時か11時にフライトの予約をしている。

それが今週は夕方6時からに変更してほしいと言われた。

6時に行ったら更に30分ほど遅れると言われて、時間をもてあましたらしい。

「2機の飛行機が故障していて、直すために2機を飛ばして部品を取りに行っていたんだって」

「最初からそう言って説明してくれればいいのにね」

アメリカ人はあまり説明をしない。

そう考えると、日本人は説明をしすぎるのか?

説明をし過ぎて、言い訳に聞こえることもある。

スポーツ選手へのリスペクト

日本人は一生懸命練習している姿を見て感動したり、応援したりしたくなる。

高校野球が人気なのも、高校生の一生懸命さ。

もちろん勝ち負けはあるが、それよりも戦っている姿に感動を覚える。

だから日本では有名なスポーツ選手が事故や事件を起こすことを許さない。

日々の行い、所作も含めて、素晴らしい選手としてみなされる。

アメリカは、野球選手でもバスケット選手でも、一度刑務所に入ったりしても活躍の場を与えられ、そこで結果を出せばヒーローになれる。

プライベートの行いはあまり関係ない。

競技で結果を出せばいいのだ。

どんなに良い行いをしていても、どんなに練習を積んでも、結果を残さなければ素晴らしい選手として認められない。

どちらが良い、悪いということはないが、結果のアメリカ、プロセスの日本である。

We Are The World

1985年に発売されたWe Are The World

アフリカの飢餓と貧困を解消する目的で作られたキャンペーンソングだ。

信じられないような蒼々たるメンバーが無償で参加していて、優しく美しく力強い歌声に、何回聞いても涙が溢れてくる。

日本にいた時、泣きたい時はこのDVDを観て大泣きしていた。

このDVDはアメリカ版と日本版ではちょっとだけ違う。

アメリカ版では、海が大好きなシーンはカットされている。

ここでも結果のアメリカ、プロセスの日本が反映されている。

日本版の方は、レコーディング中でのハプニングもカットされずに残してある。

アメリカ版にはないのだ。

アメリカ人にとったら、ハプニング=ミスなのかもしれない。

そんな場面を残す必要はない。

最後の素晴らしい歌声が重要なのだ。

6代目農場のオーナー

海が働いている農場は6代続いている大農場だ。

今のオーナー・アンディはまだ若く、海よりも少し年下40代前半だがとても尊敬できる人柄だ。

5年前から働かせてもらっているが、どんどん大きくそして待遇も良くなっている。

3年前の冬までは、働く時間や日数をカットされたが、今では週5日8時間働けるようになっている。

夏と比べると冬の仕事の量は半分以下だ。

それでもハウスの中の掃除をしたり、夏に向けての準備などをのんびりして時間を潰す日も多い。

小さな飲食店を経営していた経験上、オーナー目線で職場を見てしまうことがある。

「もう少し人件費を削れば、コストが下がるのに・・・」

とお節介なことを考えてしまう。

ここは結果のアメリカ。

アンディは大きな目で見ていて、1年間の純利益が上がれば良いと考えているのだ。

年末には「儲けが出たからボーナスね」と言って、パートタイムの海にまでボーナスをくれた。

日本人ならきっと、暇な冬でも何とかコストを削って利益を出そうと頑張る。

無駄なことはなるべく削って、少しでも利益が上がるように、もっともっと・・・と頑張る。

アンディは去年の秋くらいから、夏の計画・準備を始めている。

「来年は日本にどれくらい帰る?」

グリーンハウスのマネージャーのマットに聞かれた。

「わからない、このコロナの状況じゃ帰りたいけど帰れないよ。なんで?」

「どれくらい人を雇うか今考えているから」

「心配しないで、帰れるようになっても忙しい夏には帰らないから」

こんな会話をすでに去年の秋口にしていた。

夏に儲けを出すために、冬は人件費のことはあまり考えていない様子だ。

みんな座りながら動画を見たり、本を読んだりしながらのんびり仕事している日が多い。

 

結果はどうであれ、プロセスを大切にする日本人的な考え方も好きだ。

途中で失敗をしても結果を出せば認められるアメリカ的な考え方も好きだ。