毎日がドラマのような農場

海が働いている農場はアメリカ人経営の6代続く大きな農場だ。

どこの職場でも一緒かもしれないが、毎日のようにドラマのようなストーリーが展開している。

幸せなことに海は任されている仕事があるので、あまり人と関わらずに一人で作業することが多い。何が起こってもほとんど何も影響を受けないで仕事ができる。

冬の間はそれで良かったが、これから春・夏に向けて徐々に忙しくなるので、同世代のローラにお手伝いを頼んだ。

彼女は1日中同じ作業をやり続けていることに辟易していたので、助け舟を出した。

海が収穫してきた野菜を洗ったり、袋詰めをしてもらったり・・・やってもらいたいことは沢山ある。

去年の夏は唯一の日本人の同僚Mさんが自分の持ち場の仕事が終わった3時過ぎから手伝ってくれたが、今年は農場直営のグロッサリー兼ベーカリーのお掃除も担当しているので、海の仕事は手伝ってもらえなくなった。

 

3月から11時間ほど働いているが、9時間は外で作業をしているので作業場にはランチまでは戻らないことがほとんどだ。

体育館のような大きな作業場はランチの時間は海とマネージャーのヘザーしかいないことが多い。

彼女は静かな時間を大切にしているので、あまり会話をせずに挨拶だけしておく。

「ハイ、ヘザー」

「・・・・」

彼女は無言で手を上げただけだった。

また何かがあった予感。

「そうだ。海に共有しておかなくちゃいけない話があったんだ」

「何?」

「メリッサが告知無しで昨日辞めたんだ」

「・・・・」

今度は海が無言になってしまった。

メリッサは農場直営店のマネージャー。

アメリカでは辞める2週間前には通告することが一般的だ。

学生の子たちは突然辞めることもあるが、病気や怪我で急に働けなくなったのでなければ、2週間前通告がルールになっている。

1ヶ月ほど前には、ベーカリーのヘッドが辞めたばかりだ。

「これから私が兼任して農場とお店をみないといけないから、農場に居ないことが多くなると思う。今日の午後は海は何をする予定?」

「別に急ぎの作業は何もないよ」

「じゃあ、私の仕事をやってくれないかな?」

「いいよ」

お店のために注文しておいた、きのこ屋さんとリンゴ屋さんにお金を払うことと品物を受け取りに行くことを頼まれた。

農場が忙しくなるのと並行して、お店も忙しくなることが予想される。

ローラに仕事の手伝いを頼んでおいて、本当に良かった・・・

 

今年の夏は今まで以上に夏のメイン野菜のチェリートマトししとうを植えるので、忙しくなるのは目に見えている。

チェリートマトししとうはチェーン店の大きなスーパーに卸しているので、夏になったら毎日のようにパッキングが始まる。

去年までは50,000株、今年は75,000株植えるらしい。

3月末からメキシコから来るはずだったメキシカン家族たちは、滞在延長ビザが却下され、いつ来られるのかわからない状態だ。

そしてオーナーのアンディは、2ヶ所の町に新たにお店を買ったようだ。

まだ去年オープンしたお店も軌道に乗っていない状態で、オープンする際に頑張ったマネージャーのメリッサも辞めてしまった。

彼女がいなかったオープンできなかったかも?と言っていた存在だ。

彼女が来て1年、お店がオープンしてまだ半年足らず。

 

これからもますますドラマのような出来事が起こるだろう。

年明けにパニック障害に苦しんでいたヘザーは、ストレスに耐えられるだろうか?

ローラも先週、高血圧で病院に心筋梗塞を疑われ1泊入院をしたばかり。

だからあまり体に負担がかからない仕事をお願いしている。

 

ますます健康管理をしっかりして、いつ何が起こっても迅速に対応できるように、心構えと体力をつけておかないと・・・と思う、今日この頃である。