高校生の頃から、年上の人とお付き合いをすることが多かった。
同級生と遊ぶより、5歳10歳年上の人と遊んでいた方が楽しく、今でも友人は年上の人の方が多い。
友人と呼んで良いか分からないが、今だに20、30歳上の人との交流も長い間続いている。
自分が半世紀近く生きてくると、年下の人から学ぶことも多くなってきた。
特に今働かせてもらっている農場のオーナーのアンディ、そしてこれから一緒に働いていくヘザーから学ぶことがとても多い。
彼らからまず学ぶことは、リーダーシップ。
リーダーシップがある人と一緒に働くのはとても楽で気分が良い。
2人に共通していることは・・・
明確なビジョンを持っていること
一緒に働く人たちにリスペクトがあること
仕事に対しての愛情が強いこと
この3つだ。
今一緒に働いている水耕栽培のハウスのマネージャーのマットは、とても頭が良く性格も良いのだがリーダーシップが欠けているので、職場がギクシャクして不満が起こる。
リーダーシップは後から身につくのか?元から持っているその人の能力なのか?
明確なビジョンを持っている
これから一緒に働いていくことになったヘザーは、今の農場でやりたいことがたくさんある。
畑の近くの国道沿いでプロデューススタンドをやる
野菜を売るだけじゃなく、カフェも隣接してコーヒーやマフィン、サンドイッチや日替わりのスープなどの軽食も提供したいらしい。
畑の敷地内に小さなプロデューススタンドを作って来週から始める。
これは実験らしい。
着々とやりたいことを計画をし、オーナーのアンディと相談しながら進めている。
とても大きいこの農場は、これから夏の繁忙期に向けてプチトマト、ししとうを中心に夏野菜を大きなスーパーに卸していく。
夏になると20人近くのメキシカンの人たちが収穫の手伝いに来て、朝6時から夜8時ころまで週7日休みなく働く。
今は農地をまた買い増やし、今年の夏は去年よりもっと忙しくなる予定だ。
それでも忙しいのが好きだというヘザーは、その仕事のマネージメントの仕事と並行して自分のやりたいことを実現しようとしている。
「海、相棒として一緒に働いてくれる?」
農業の勉強がしたいという海の熱意とヘザーのやりたいことが一致して、来週からは水耕栽培の仕事から、ヘザーの元で仕事をやることになった。
彼女はやりたい事とこれからの計画を明確に伝えてくれるので、自然と「彼女についていこう」という気持ちになる。
ビジョンがなく、ただ忙しさと仕事に追われているだけでは、彼女について行こうとは思わないだろう。
もちろん「彼女のやりたいことに共感する」という気持ちが大前提だ。
ビジョンが明確ということは、ゴールがどこにあるのか?どこに向かっているのか?がはっきりするので、やりがいを見つけやすい。
ゴールが見えるということは部下にとったら、とても大切なことだ。
一緒に働く人たちにリスペクトがある
アンディは仕事に口出しをしないタイプのオーナーだ。
これからのプランを伝え、やり方はそれぞれの部署のマネージャーに任せている。
オーナーとしてどっしりと構えているが、忙しい時は自ら流れ作業のラインに入って作業もするフットワークの軽い人だ。
人手が足りない時に彼が手伝ってくれるときは私たち(ラインの流れ)のやり方に合わせて、一番下っ端のような態度で仕事をする。
長年働いているメルセデスはいつもアンディに注意をしている。
「パトロン(ボス)、ちょっと入れすぎだよ。ダメだよそんな入れ方じゃ!!」
そんな時は、「またメルセデスに怒られちゃったよ。こんな感じで大丈夫かな?」
とお茶目に海に聞いてくる。
従業員にリスペクトの気持ちがなければこんな態度はできない。
ヘザーはこの農場で働き出してまだ1年ほどだ。
ヘザーとの会話で彼女のすごさを知った。
「去年1年間は仕事の流れとみんなの働き方をみて、いろいろ教えてもらっていたよ。私は農業を13年やっているという自負はあるけど、彼ら(メキシカン)のやり方があるから、しっかり見させてもらった。女だからって最初はバカにされていたけど、彼らのやり方を尊重しながら、少しずつ私の考えややり方を伝えていって、やっと今は理解してもらえるようになったよ」
「お互いにリスペクトし合って、とてもいい関係を築けているよ」
途中から入って、メキシカンの人たちの上に立つのは難しい。
彼らは仲間意識が強く仕事もできるので、中途半端なことをやっていたら言うことを聞いてくれない。
でも一度信頼関係を築いたら、ミスをしてもフォローもしてくれるし、大変な仕事を頼んでもきちんとやってくれてとても働きやすい。
1年間自分を出さずに、ジッと観察をしてそれぞれの人の性格や仕事のやり方を把握した上で、自分のやり方を少しずつ伝えていく彼女の姿勢がすごいと思った。
思い返すと、去年の繁忙期に彼女の仕事を手伝った時、「ヘザーこれはどうする?」と聞いた時、「海ならどうする?」と聞かれたことを思い出した。
「私はこうやったほうが良いと思う」
「イイね。海のやり方でやって」
その時、「あまりヘザーは頼りにならないな」と思っていた。
でも違ったのだ。
それぞれの仕事のやり方や働く姿勢などを観察していたのだ。
今のヘザーは全然違う。
「海、これをこういう風にやって。私はこういうやり方でやっているけど、海のやりやすいやり方があったら、私の言う通りにしなくても良いよ」
「何時までにこの仕事を終わりにしたい。その次はこれをやってね」
適切に効率的に指示を出してくれる。
「お主、なかなかやるな〜」という感じである。
仕事に対しての愛情が強い
仕事に愛情がない人はリーダーには向いていない。
仕事に対しての愛情が、カリスマ性を生むような気がする。
カリスマとは他人を統率する才能や魅力を持った人という意味らしい。
統率する才能や魅力は、その人がどれくらい何かに熱中しているかに比例するような気がする。
ヘザーはとにかく農作業が大好きだということが伝わってくる。
「毎朝、土の香りを嗅ぐだけで幸せで生きているって気分になるんだよね〜。土をいじっているだけで心が落ち着くよ」
農場の仕事は7時から始まるが、彼女は毎朝6時半には出勤して1日の予定を立てている。
「みんなが来ない時間に来て予定を立てているんだ。その方が仕事に集中できるから」
アンディも仕事が大好きなのがわかる。
小さなころから子供たちを農場に連れてきて簡単な仕事を手伝わせている。
13歳になった長男は去年の夏休みは朝から晩まで働いていた。
この州では13歳になると合法的に働ける。
この農場の7代目だ。
以前少しだけ働かせてもらった農場のオーナーは「自分の息子には絶対にこの仕事をさせたくない。こんな大変で儲からない仕事はない」と言っていた。
息子にさせたくない仕事を従業員にさせている???
働く環境も効率も悪く、拷問を受けているような感じがした。
働いているメキシカンの人たちもとても意地が悪く、わざと大変なことを押し付けてきた。
仕事が好きじゃないオーナーの元で働いている人たちは皆、嫌々働いてる。
リーダーシップがある人の下で働くのは気持ちがいいし、楽しい。
年下の彼らから学ぶことはまだまだたくさんある。