いまから25年ほど前、スペインで飲食店を開こうと毎年にようにスペインに物件探しの旅に行った。
最初に行ったのは、スペインのイビサ島。
今ではクラブやパーティーでとても有名な島だが、25年前の日本ではまだあまり知られてなかったように思う。
25年前でも、ヨーロッパ各地(特に北欧)から沢山の観光客で、24時間オープンしているクラブなどがあった。
岩手出身の旦那さんとスペイン人の奥さんが切り盛りしているレストランだった。
日本では料理をしたことがない素人だった旦那さんが見よう見まねで作っていたので、お世辞にも美味しいとは言えないレストランだった。
でもロケーションは最高だった。
このスペインへの最初の旅から帰ってきた1ヶ月ほど後に、なんとこのお店を売りたいという連絡が入った。
当時の日本円で500万円ほど。(営業権付き)
この時はまだEU統合前で、スペインの物価はとても安かった。
「とにかくお金をかき集めてすぐに行きます」と伝えたが、すぐに日本に帰らなければならない事情が出来てしまったオーナーは、急いでドイツ人に売ってしまった。
一旦スペイン行きを諦めて東京で飲食店を開け、毎年2ヶ月お店を休んでスペインを中心に海沿いの街での物件探しの旅が始まった。
そして海のスペイン語の独学も始まった。
お店が終わって家に帰ってから、毎晩お風呂場にラジカセを持ち込んでCDと一緒に音読することを始めた。
お店では閉店近くになるとお酒も飲んでいたのでほぼ毎日酔っ払っていたが、何度も居眠りをして本を湯船に落としながらも毎晩長くて5分、短いと2、3分は頑張った。
そして1冊の教本は丸暗記した。
そんなこんなで、旅行で困らない程度のスペイン語をこの時に習得したのだ。
「オラ、ブエノス・ディアス!(おはよう)」
毎朝、メキシコ人の畑の同僚に挨拶をして1日の仕事が始まる。
水耕栽培ではメキシカン・アミーガ(女子)3人と仕事をしていたが、念願の露地栽培に異動が出来てから、メキシカン・アミーゴ(男子)と働いている。
彼らの体力は尋常じゃない。
夏になると1日14時間7日間、1週間に100時間以上も働くこともある。
まだ寒い今は4人のアミーゴがのんびりと働いている。
夏になるとアミーゴのボスの呼びかけで、20人くらいが集まる。
「動画を観ながらのんびり仕事が出来るのもあともう少しだよ」
マネージャーのヘザーもオーナーのアンディも彼らの夏の働きを知っているので、今はどんなにのんびりしていても許している。
まだ海の担当の仕事もあまりないので、彼らの仕事を手伝いながら畑仕事を教わっている。
彼らと仕事をするのは本当に気分が良い!!
感覚がとても自由だからか?
歌いたい時には歌い、疲れたら大声を出して発散し、みんなでバカなことを言い合いながらワイワイ仕事をしている。
そんな中で仕事しているのがとても心地良いのだ。
アミーゴのボスのロベルトは英語も話せるが、海にはスペイン語でしか話してこない。
「ノーコンプレンド(分からないよ)」
と言っても、子供に言葉を教えるようにスペイン語で説明してくれる。
そのおかげでますますスペイン語が上達している。
彼らの考えはとてもシンプルで、行動は本能に近いような気がする。
感も鋭い。
ロベルトは頭の回転も早く、決断力も優れていて、働き者だ。
「ロベルト、来週ビニールのマルチを畑に引くとき手伝いたい。ヘザーにも確認するけど、カンポ(畑)の仕事を教えてほしいよ」
「カンポの仕事は大変だよ」
「うん、でも教わりたいんだ」
ヘザーにも頼んでみた。
「OK、来週はあまり忙しくないから、私からもロベルトに頼んでおくね」
メキシカンの人たちと働くと、自分のテンションが上がるのがわかる。
肉体的には辛くても、心が喜んでいる感じだ。
理由はわからないが、もしかしたら私の前世はメキシカンだったのかもしれないと思う今日この頃である。