空と海は基本、1日1食の食生活だ。
1日1食にしたのは、夫、空の高い血糖値を改善するためだ。
長い間血糖値が高いかも???と思いながら放っておいた。
見てみないふりをしていたという方が正しいかもしれない。
アメリカでの生活が危機的状況に陥ったある冬、日本にワンシーズン出稼ぎに出た。
日本で医者に即入院と言われた恐ろしいほど高かった空の血糖値を、1ヶ月で正常値にした。
人体実験は大成功だっだ。
病気は自分自身で作ったものだ。
自分が作ったものは自分にしか治せない。
今の空の血糖値は日本の正常値より高めかもしれないが、絶好調で過ごしている。
血糖値に気がつく前
40代後半だったとき空の体調は絶不調だった。
精神的にも落ち込むことが多く、ため息ばかりついていた時期だ。
食生活はとても気にしていたが、今思うと間食をかなりしていた。
牛乳は飲まないが、キビ糖を使ったチョコレート味のソイミルク。
コーラはではなく、キビ糖を使った甘いソーダ。
ビーガン用のチョコレートマフィン。
海が手作りした餡子。
オーガニックでシーソルトを使ったポテチ&スナック菓子。
なんとなく体には良さそうだが、糖をたっぷりとっていた。
白い砂糖は体に毒だが、キビ糖は大丈夫だと信じ込んでいた。
今考えると笑ってしまう。
酒もタバコも飲まない空の唯一のストレス解消が間食だったのだ。
2階に住んでいたにも関わらず、便器にアリが集まっていた。
「空、アリが便器にいっぱいいるよ。やっぱり血糖値が高いのかもよ。」
半年か1年くらいはこんなことを言っていた気がする。
わかっちゃいるけど甘いものはヤメられない。
アメリカに住んでいると簡単には病院には行かない。
医療費が恐ろしいほど高いので、検査なんてとんでもない。
自分の体調が悪くても実際に数値を見るまでは、生活は簡単には変えられないのである。
最終的にはTシャツが体に触れるとピリピリすると言いだした。
これはかなりヤバイ症状、高血糖が原因で起こる神経障害だ。
それさえも見てみないふりをして、空の絶不調はどんどん深まっていった。
日本で発覚した異常な高血糖
日本での出稼ぎ生活は住み込みのリゾートホテル。
空は人生初のホテルマンとしてフロント業務をしてた。
フロントの仕事として、ロビーにある暖炉の薪をくべる仕事があった。
ある朝空はいつも通り薪をくべていたら、「バチッ」と火花が跳ねて、目の中に異物を感じた。
そのあと痛くて目が開けられなくなり、同僚に一番近い眼科まで連れて行ってもらった。
検査の結果は”眼球に傷が付いているので、しばらくは眼帯をして様子を見る”だった。
「目の奥に黒い点があるのが気になります。大きな病院で一度検査をした方が良いですよ。」
せっかく日本にいるのだから、きちんと検査をしようと隣町の病院に検査に行った。
そこでの検査結果で
「血糖値が500を超えています。即入院してください。インシュリン治療をすぐに行います。」
「いいえ、入院はしません。」
空は即座に入院を拒否した。
一緒に行った海も呼ばれた。
「旦那さんは即入院が必要なほどの高血糖です。すぐに治療をしなければ、どうなるかわかりません。しかし旦那さんは入院をしないと言っていますが、奥さんはどう思いますか?」
「主人が入院をしないと言ったなら、それで良いと思います。」
海も即座に答えた。
すると担当の女医は怒って、処方箋の紙をビリビリに破いた。
「一応食事指導の予約を入れてあるので、それだけは受けて帰ってください。そして、1ヶ月後に再検査には来てください。」
治療を拒否している患者にもきちんと対応してくれて、さすが日本の病院だ。
腑に落ちない食事指導
空と海は食事指導のため、栄養管理士がいる病棟に行った。
まず空の今までの食事をいろいろ聞かれた。
空の食事は1日2食+間食だった。
栄養管理士の指導は、1日3食にして間食の質を変えるというものだった。
空も海も普通の人よりも専門的な健康に関する本をたくさん読んでいる。
海はオンラインで”食養アドバイザー”という資格もとっていたので、高血糖なのに食事の回数を増やすという指導に疑問を感じだ。
「血糖値が上がるメカニズムを教えてもらえますか?」
空の場合は、食事の回数が少ないために血糖値の変動の波が大きく、その波をなるべくなだらかにするために食事の回数を増やすというものだった。
いくつかの質問をし、回答を聞けば聞くほど、絶対に食べない方が良いという考えになった。
「1日1食にした方が絶対に良いと思うけどどう思う?」
食事指導のあと、空に聞いてみた。
「俺も同じことを考えていたよ。1日1食をしてみるか。」
出稼ぎでホテルの寮に住んでいる2人は、自炊するのが難しい。
ホテルから3食の賄い付きだ。
まずは炊飯器と玄米を買って、過酷な条件で1日1食、間食なしだ。
1ヶ月後の再検査まで、自分たちが信じている健康法で空の人体実験が始まった。