海外に住んでいるとついつい「○○人は〜」とその国の人たちをカテゴライズしてしまいがちだ。
ステレオタイプで人をジャッジしてしまう。
海が働いている農場は本格的に繁忙期の準備に入り、どんどんと忙しくなってきた。
5月の3週目から夏休みに入った大学生がアルバイトに入ってきた。
今まで農場に来た学生ちゃんたちは、やりっ放しの子がほとんどだった。
後片付けをしない、掃除をしない。
言ってもその時だけはやるけど、次からはやらない。
「やっぱり学校でお掃除の時間がないから、しょうがないのかな?」と思っていた。
今の学校はわからないが、海が学生だった昭和の時代は放課後の掃除はもちろん、小学生の時は月に1度ワックスがけも生徒の仕事だった。
固形のワックスを投げたり、体操着にワックスを付けてピカピカにして親に怒られた記憶がある。
海は大雑把な性格なので、きちんとした後片付けは苦手だったが、さすがに職場では自分以外の人も使うので、使ったものはあった場所にきちんと片付ける。
夫の空は効率優先の考えなので、きちんと片付けた方が効率的だということを教えられ、今では少し整理整頓が上手になっている。
海が働いている部署に入ってきた学生ちゃんアイデンは、マネージャーのヘザーが雇った初めての男の子だ。
今までは現場には出てこないセールスマネージャーのティムが人事もしていた。
そのおかげでトラブルも多かった。
「こんな仕事をするなんて聞いてない」
と、やりたくない仕事をしない学生ちゃんもいた。
アイデンが働き出した初日、自分が作業をした台を最後にきちんと片付け拭いているのに驚いた。
「海、アイデンに床を掃くように言った?」
ヘザーから聞かれた。
「何も言ってないよ」
「帰る前に綺麗に床を掃いてから帰っていったよ」
思わず二人でガッツポーズ。
”言われなくても、きちんと後片付けが出来る子”こういう子を求めていた。
「アイデンの家族をみんな知っているんだ。ご両親は二人とも良い人で子供も教え子だったんだけど、とても良い子。アイデンは末っ子だけど、やっぱり良い子で良かった」
ヘザーは大学でフィジカルトレーニングを教えていたことがある。
その時に、アイデンの兄弟を教えていたらしい。
今まではアメリカ人はみんなやりっ放しだと思っていた。
マネージャーのヘザーはとても日本人の感覚に近い、珍しいタイプのアメリカ人だと思っていた。
彼女のお父さんは厳しい人で、きちんと躾られたようだ。
このヘザーといい、アイデンといい、親のしつけと家庭の教育がどれほど大切か教えられた。
日本でも昔は家庭の教育が一番だった気がする。
「親の顔が見てみたい」
悪いことをすると、こんなことを言われた。
今では親が忙しすぎて、教育は学校で・・・と勘違いをしている親が多い気がする。
学校でしか学べないこともあるが、基本的な人間形成は家庭教育が一番大切だ。
久しぶりに「育ちが良い子」に出会えて、そんなことを思った。