強すぎる?余分な正義感と責任感

子供のころから正義感が強いのは自覚をしていた。

その最初の記憶は小学校2年生の時だ。

クラスで一番背の高い女の子が番長的存在で、自分の言うことを聞かないクラスメートを仲間外れにしていた。

海は仲間外れにされた訳ではないがその番長の女の子が嫌いで、仲間外れにされた子だけを集めて、休み時間には大騒ぎをして遊んでいた。

「仲間に入れてもらって良い?」

番長の仲間の子がやってきた?

「こっちに来たら、番長に仲間外れにされちゃうよ」

「うん、いいの。こっちの方が楽しそうだから・・・」

 

中学1年生のときは暴力教師がいて、ちょっと不良っぽい男の子を理不尽に殴った。

それを見て、黙っていられなくてクラスメートの数人に声をかけ、その暴力教師の国語の授業をボイコットした。

その不良っぽい男の子のことが小学生の時からずっと気になっていたので、ほとんど学校に来なくなったその子の家に朝迎えに行ったりもした。

中学、高校時代は反抗期だったと思うが、とにかく理不尽な大人が嫌いだったので、理不尽な言動をする教師に腹を立てて、校長室まで文句を言いに行っていた。

そんな正義に満ちた子供だった。

 

責任感も強い方だと思う。

小学校6年生の時は児童会長をした。

目立ちたがりで「書記」に立候補をしたのが、人気投票で1番になり会長になってしまった。

「あなたは頭が良くないんだから会長は無理。副会長の関口くんに会長を代わってもらいなさい」

学校から帰ってきて母に報告をしたら、こんなことを言われた。

「やだ!!せっかく会長になれたんだから、やってみる」

関口くんは学年で一番頭の良い男の子だった。

そして1年間やり遂げた。

責任感は母から植え付けられたものだと思う。

生まれた時から一緒に育った犬が死んでしまって、新しい犬が欲しいと母に訴えた。

「自分のこともきちんと出来ないのに犬の世話なんかできるわけないでしょう。本当に欲しいのなら、きちんと自分のことを責任をもってやりなさい」

それから1年間、母に言われた家の手伝いの他、自分の食べた食器と家族の食器洗いをした。

1年間やり遂げた私の行動を評価してくれて、念願の犬を飼うことを許してもらった。

ピアノを習いたいと言った時も「途中で投げ出さない、やり続けること」が条件だった。

どんなにピアノ教室が嫌になっても、中学生になって部活が始まり、通えなくなるまで続けさせられた。

こうやって子供のころから自分の言動に責任を持つということを教え込まれた気がする。

 

今働いているアメリカの農場は、オーナーもマネージャーもアメリカ人。

そしてきっちりとした分業だ。

アメリカ人は、自分の仕事と自分以外の仕事をしっかりと分ける。

2008年にアメリカに移住してきてから、初めてアメリカ人の元で責任のある仕事を任された。

2008年から2012年までは学生で、そのあとは日系のホテルで仕事をしていた。

直属の上司は日本人だった。

2015年に引っ越してきて今の農場で働かせてもらっているが、今まではただのアルバイトで流れ作業の一員だった。

6年半ぶりに責任ある仕事に就け、しかもとても仕事ができる頭の良いアメリカ人が上司。

海のやる気はマックスだ。

本来の正義感と責任感がフツフツを湧き上がってきてしまった。

今まで海のポジションにいたのは学生の4人の女の子たち。

マネージャーのヘザーは去年入ってきたばかりで今まで様子を見ていたが、きちんと責任感のある人と仕事をしたいとのことで、学生ちゃんたちがやっていた仕事を任された。

そしてその任された仕事は、去年よりもどんどん大きくなっている。

「もう学生の子たちに仕事は任せられない。ずっと私がついて見ていなくちゃならないから・・・」

私ともう一人、やる気があると見受けられた21歳の女の子も海と一緒に水耕栽培のハウスから異動になった。

その女の子はハワイの果樹園で働いたり、農業が大好きだと言っていた。

歳は若くても学生のアルバイトではなく、きちんと社員として働きたい意向があったが・・・

一番大切な忙しい日に休む。

朝起きられないと言って、10時出勤にしてもらいたいと言ってくる。

腰が痛くて、長い時間農作業は出来ないと言う。

座ってやる簡単な仕事しか率先してやらない。

「サラのことを期待していたのにガッカリだよ。やっぱり若い子はダメなのかな?」

マネージャーのヘザーはとてもガッカリしていた。

そんな彼女を見て海の正義感がマックスになり、サラのやるべき仕事までやってしまっていた。

彼女が10時に来てもやることがない。

「海、その仕事はサラにやらせようと思っているから違う仕事をして。彼女にも何か仕事をさせないと・・・」

海は自分の任されている以外の仕事にまで手を出し過ぎてしまっていた。

反省!!

自分の仕事をきちんとこなし、そして他の仕事もきちんとやっていたら、日本ではもしかしたら評価してもらえるかもしれない。

でもここはアメリカ。

人の仕事を横取りしていることになってしまっている。

任された仕事をきちんとこなせなければ、異動や解雇の対象になる。

それを海が代わりにしていたら、新しい人を雇いたくてもサラにポジションを退いてもらう口実をつくれない。

そしていつかは、海の担当の仕事にも影響がでる。

そんなことも考えずに、余計な正義感と責任感で仕事をしていた。

ヘザーはリーダーシップもあり、人を見抜く力もあり、マネージメント能力も高い。

そんな彼女の力になりたいと、逆に足を引っ張っていた。

海のやる気が空回りしてしまっていた。

早く気がついて良かった・・・

自分の仕事に集中することにした。

サラの仕事は見て見ぬふり。

ヘザーに頼まれたらやればいいのだ。

 

正義感と責任感が強すぎるのも考えものだ。

でも、そんな自分にすぐに気がついて良かった。

毎日自分を磨く修行は続く!!