自分で自分自身を苦しめている人がとても多いと感じる。
特に海の周りには繊細の人がとても多い。
そんな海もちょっと前までは、自分の思い込みに苦しむことがあった。
ベキベキ星人だったのだ。
もっとこういう風にするべき・・・
自分でルールを作って、そのルールにがんじがらめになっていた。
「すべきことなど何もない」ということに気がついてから、とても楽になった。
とても大雑把な性格だが、へんなところが真面目でもある。
自分でもこうあるべきというのがあったが、人に対してもこうすべきだと自分の思いややり方をぶつけることが多かった。
一番の被害者は夫の空だった。
海が働いている農場の同僚が、今とても苦しんでいる。
責任感が人一倍強く真面目で、完璧主義者のマネージャーのヘザーだ。
2年前に彼女が来てから、いろいろなことが変わった。
売り上げがもっと上がるよう、みんながもっと働きやすくなるように一生懸命にやっている。
だが農場の中には今まで通りに働きたい人もいるし、ヘザーのやり方に賛同してくれる人ばかりではない。
彼女の実家は農業を営んでいた。
仕事にとても厳しいお父さんの元で9歳のころからお手伝いをし、「農業とは、仕事とはこういう風にすべき」ということを叩き込まれてきた。
だから彼女の中にはたくさんの「べき」が詰め込まれている。
2021年繁忙期が終わり、11月頃からだんだんと仕事が少なくなってきた。
彼女の仕事も楽になってきたはずなのに、イライラしていることが多くなっている。
もともと情緒的な人ではあったが、気分の浮き沈みが今まで以上に激しくなっている。
突然早退したり、仕事を休むようになった。
「海には言っておくね。実は昨日の朝パニックアッタクの症状が出て、今セラピーを受けているんだ。ちゃんと治してみんなにとってもっと良いリーダーになるからね」
こんなメッセージが届いた。
「ヘザーはもうすでに良いリーダーなんだから、そんなこと思わなくて良いよ。何も心配しなくて大丈夫だよ。自分にプレッシャーを与えず、もっと自分を労ってあげて」
ヘザーは「リーダーはこうあるべき」というのが自分の中にある。
そういう自分でいられないと、自分を責めてしまうのだ。
新しい年が明けて少し元気になってきたように思った。
少し笑顔が戻ってきた。
それでもちょっとしたきっかけで感情的になってしまう。
他の同僚がいるときは仕事の話しかしないが、二人だけになるとマネージャーではなく友人としての会話になる。
「海、私は最近体を十分に休めているし、お酒も肉も止めて体を整えているのに、全然疲れがとれないんだよ。もうどうしたら良いのかわからないよ」
「お風呂には毎晩入っている?」
「うん。毎晩エプソンソルトを入れたり、アロマオイルを入れた湯船に浸かっているよ」
「ヘザー、体が疲れているんじゃなくて、脳が疲れているんだよ。今の暇の時期に仕事を離れて、少し自然の中でのんびりしてきたらどう?」
「そうしたいけど、みんなに悪いと思っちゃう」
「悪いなんて思う必要なんて何もないよ。出来ればもう少し脳を休ませてあげて」
こんな会話をしていたら、彼女の感情が崩れ泣き出してしまった。
10歳以上お姉さんの海は彼女を抱きしめて、背中を摩った。
「何も心配しなくて大丈夫だよ。絶対に良くなるから大丈夫だよ」
「ありがとう海。もう大丈夫」
すぐにマネージャーの顔になり、仕事に戻った。
ヘザーはヨガのインストラクターもやっているので、波動やエネルギーなどスピリチュアル系の話ができる。
感覚で会話ができるので、拙い海の英語力でも言いたいことはだいたい伝わる。
しかしもっと英語が出来たら・・・もう少し彼女の心を軽くしてあげることができるのに・・・といつも思ってしまう。
「べき思考」を手放し、もっとお気楽になるべきなのに・・・
そう、この考えがダメなのだ。
お気楽になっても良いし、ならなくても良い。
ヘザーは今のままのヘザーで最高だ。
すべきことは何もないのだ。