今働いている農場での仕事は、ストレスがとても少ないように思う。
特に今は任されている自分の仕事があるので、自分のペースで仕事ができている。
それでもストレスを感じてしまうこともたまにはある。
そのほとんどが、時間に追われている時だ。
臨機応変に対応するのは得意なので、突然いろいろなことを頼まれてもほとんど気にならない。
それでも時間に余裕がない時は、たまにイライラしてしまうこともある。
海が担当している仕事のうちの1つ、Grab&Goという野菜ボックスのオンラインオーダーがある。
これは2020年、コロナのパンデミックが広まり始めた時に始まったサービスだ。
ファーマーズマーケットの出店にも規制がかかり、あらかじめ箱に詰めた野菜をとりに来てもらうという形を取ったのだ。
そのサービスが好評で、ファーマーズマーケットだけではなく、農場か最近オープンした農場直営のグロッサリー&ベーカリーストアに取りに来てもらえれば、いつでも注文ができる。
しかし2日前までに注文を入れてもらうことになっている。
実際にボックスを作るのは海の仕事だが、マネージャーのヘザーがいつも注文を確認し、前の日までに知らせてくれていた。
そのヘザーの仕事を今はメリッサが担当している。
メリッサは農場直営店の店長だ。
仕事の多いヘザーの仕事を彼女に少し手伝ってもらう形で、彼女がGrab&Goの予約確認をすることになった。
メリッサから直接連絡をもらえればいいのだが、メリッサ→ヘザー→海なので、当日に突然オーダーが増えていることがある。
海は前の日までにだいたいの準備をしておく。
レタスなど、収穫して洗って水切りをして・・・と手間のかかるものは、なるべく前の日までにやっておく。
いつもはだいたいオーダーが増えても良いように多めに準備をしておくのだが、きっちりしかない時に限って当日にオーダーが増えている。
そしてそういう日に限っていつも頼まれないことまで頼まれる。
「海、ごめん。今日は人手が足りないんだ。レストランのオーダーのフィッシュペッパーを2パウンド取ってきてくれないかな?」
いつもなら同僚のフェルミンの仕事なのだが、彼も他の大きな仕事を手伝っているのでできないらしい。
「オッケー、大丈夫だよ」
時計を見ると、8時を回っている。
この日のGrab&Goは5つ。そのうちの3つは直営店に取り来るオーダーだったので、9時半までに準備をしなくてはいけない。
メリッサが9時半に取りにくるのだ。
これから収穫に行くと9時半に準備ができるかギリギリだ。
ちょっと前の海だったら、焦ってイライラしながら猛ダッシュで準備をした。
「そっか、出来ないって言えばいいんだ」
自分にプレッシャーをかけて、イライラすることをやめた。
「ヘザー、メリッサに連絡して9時半には準備ができないから、出来上がり次第私がお店まで持っていくって伝えておいてくれる?」
「海、持っていく時間はあるの?」
「うん、大丈夫だよ」
焦ったり、イライラしてもいい仕事は出来ない。
できない時は、代案を考えればいいのだ。
これは出来ないけど、こういう風にします。これでイイのだ。
その後、フィッシュペッパーを収穫に行ったのだが、ほとんど実がなっていない。
「ヘザー、片手くらいのフィッシュペッパーしかないよ。2パウンドなんて無理だよ」
「違う場所にも少しだけフィッシュペッパーのハッチがあるから、ちょっと歩き回って探してみて!」
だいたいバタバタしているときは、物事スムーズには進まないことになっている。
「良かった、9時半までに出来ないって言っておいて」
悪いスパイラルにハマると、ずっと流れが悪くなる。
しかし「出来ない」と先に宣言をしたことによって、悪いスパイラルを断ち切った。
イライラもせず、リラックスして仕事ができる。
畑の中は前日の大雨で泥濘みだった。
焦っていたらここにハマって転んでいたかもしれない。
焦らずに作業靴から長靴に履き替えてから行ったので、泥んこの中も平気だった。
イライラする=自分の思い通りにいかない
「自分の思い通りに物事を進める」ことをやめたので、自然と「出来ない」ということが言えた気がする。
仕事も人生も思い通りに行くことなどほとんどない。
出来ないことは出来ないでいいじゃないかと思えるようになった。
無理をせず、出来ないことは代案を考えるか?誰かに手伝ってもらうか?すれば良いのだ。
真面目で責任感が強い人ほど、これができない。
海もプライベートは真面目じゃないが、仕事は真面目で責任感が強い。
「出来ない」と言えなかったのは、自分のへなちょこのプライドと、評価されたい!!褒めてもらいたい!!という気持ちが強かったからだ。
でも肩の力を抜いた方がなんでも上手くいく。
仕事の評価なんて、ほんの少しだ。しかも出来ないことを出来ないということで評価なんて下がらない。
評価が下がったように感じるのは、「出来ない」という自分に対してのへなちょこのプライド。
海の評価は自分で決めればいいのだ。
こんな小さなことでは海の評価なんて、何にも下がらないのだ!!
こんなことが思えるアラフィフになって、生きていくのも仕事ももっと楽しくなっている。