海が通っていた語学学校は私立で厳しい学校だった。
授業料は高かったが、授業と先生の質は高かった。
世界各国から裕福な家庭の子が集まっていた。
授業料がとても高いので海が用意していたお金はどんどんなくなっていく。
「働かないとやっていけないかも?」
留学生は働いてはいけない。
でも多くの留学生はかくれて働いていた。
居候させてもらっている友人に相談すると、彼女のアメリカ人の旦那さんが
「学校でおにぎりを売ったらどう?おいしいおにぎりを作ったら絶対に売れるよ」
海はこの案に乗ることにした。
1日に作れるおにぎりは20個。
1個1ドルで売ることにした。
裕福な家庭の子供たちといっても、みんな親に迷惑をかけないように無駄遣いをせずに頑張っているのを知っている。
だからなるべく安くしたかった。
買ってくれたのは韓国人の男の子がほとんだ。
みんなお米に飢えていた。
毎日のように食べていた、ピザやサンドイッチの食事に飽き飽きしていのだ。
「海、明日も2個ちょうだい!!」
だいたいみんな2個ずつ買ってくれた。
固定客10人、常連のお客様だ。
海のおにぎりはどんどん大きくなっていく。
中身も豪華になっていく。
プルコギおにぎり、スパムおにぎり、混ぜご飯のおにぎり、チャーハンおにぎり・・・
ボリュームたっぷりで大きめ、男の子たちが満足してくれるようなおにぎりを毎日作っていった。
1日の売り上げはもちろん$20
ほとんど儲けはない。
毎日待っていてくれる子たちのために、毎朝早起きして作っていった。
なんだか母親になったような気分だ。
ある日先生から呼ばれた。
「海、おにぎりを売っているんだって?」
怒られるのかと思った。
「おいしいおにぎりだって聞いたから、明日1個予約するわ。」