2021年9月に思わぬ事態が勃発した。
血糖値が高い状態をかなり長い間続けてしまっていた夫、空の目に異常が出てしまったのだ。
呑気な夫婦は「大丈夫だろう」とあまり気にしていなかったが、2020年の12月から食生活を見直し、血糖値をコントロールし始めた。
そのおかげで空腹時とヘモグロビンA1Cの値は正常値に戻ったが、食後の血糖値は上がり気味になってしまう。
「ちょっと目が見えにくくなってきたから飛行機を乗るのを少しやめようと思っているんだ。」
大好きな飛行機に乗るのをやめるのは、かなりのことだ。
飛蚊症と白内障の自覚症状が出ていたので、フライトスクールのオーナーが勧めてくれたクリニックに予約を入れたが、予約は3ヶ月先。
検査を受ける前にフライトスクールに通うのを一旦やめた。
「急に大きな黒いもの(飛蚊症)が視界に入ってきて、コンピューターのスクリーンが見えなくなったよ。どうしよう、これじゃ仕事ができないよ」
仕事中に空から連絡があった。
空の仕事はフライト・ディスパッチャー。
コンピューターのスクリーンが見えなくなったら、仕事ができない。
次の日に急いでクリニックに連絡を入れると、すぐに予約を入れてくれた。
「違うクリニックで精密検査を受けてください」
精密検査が受けられるクリニックはこの田舎町には1つしかないらしい。
1年前に1度行って、あまり感じが良くなかったから行かなくなったクリニックだった。
緊急事態なので嫌だとは言っていられない。
検査結果は・・・
糖尿病網膜症だった。
糖尿病網膜症の治療はかなり時間もお金もかかる。
医療費が高いアメリカでは、どれくらいのお金がかかるか想像ができない。
しかもアメリカの保険システムは複雑でまったくわからない。
会社で入っている保険が効かなければ、1回に何千ドルもかかる治療だ。
最初の1回目はサンプルの薬を使って治療をしてくれた。
サンプルの薬を使うことが、どういうことかはよくわかっていない。
クリニックから連絡があり、今度の治療から保険適用の薬を使うから、保険会社に連絡を入れるように言われ、保険会社に連絡をしたら、また違う会社に連絡をするように言われ、たらい回し状態だ。
「アメリカの保険システムってなんでこんなに複雑なの?」
海は職場(畑)の同僚のアメリカ人のローラに聞いてみた。
「病気になって病院に行くと、保険の問題でますますストレスがかかって病気が悪化するって、よくある話だよ」
本当にその通りだと思う。
違う同僚は、「だから私は保険に入ってないよ。病院に行くつもりがないから・・・」
アメリカでは保険料が払えずに自己破産をする人もかなりいると聞いている。
それでもみんな病院に通うのが不思議である。
「治療を止める。仕事も辞める」
これが空が10月に出した決断だ。
そして海はしばらくの間、大黒柱になることを決意した。
またアラフィフ夫婦は人生設計を立て直すこととなった。
10代の頃から、「平凡な人生を送りたくない」と思ってきた。
思い通りの人生になっているのかも???
意外なことに、まったく不安がない。
「今」を楽しんで生きていけばなんとかなると本気で思っているからだ。
新たな人生設計を考えるだけで、ワクワクしてくる。
つくづく能天気・楽天的でよかったと思う、今日この頃である。