放った言葉はすべて自分に戻ってくる不思議

「自分でやったことは全て自分に帰ってくる」

このことは知っていた。

放った言葉もまさか自分のところの戻ってくるなんて・・・

海はそんな体験を2度もした。

しかも言ったことも忘れてしまうくらい年数が経ったあとで。

 

初デートで言われた言葉

夫、空との初デートの時、車を走らせしばらくしてからこんな事を聞かれた。

「俺は結婚する気も子供を作る気も、一緒に住む気もないけど良いかな?お互いに若くないから、もしそういうことを考えているようなら俺と付き合うのはやめたほうが良いと思って。」

海はこの言葉を聞いた時、面白いと思った。

思わず笑ってしまった。

まだ付き合うかどうかもわからない初デートだ。

空の優しさからの発言だった。

空から言われたのは、海が別れた前のパートナーに10年以上言い続けた言葉だった。

才能に溢れた人だったが、家庭にはまったく向かない人だったからだ。

一緒には暮らしていたが、

「あなたと一生一緒にいるかもしれないけど、結婚はしないし、子供は作らない」

と言い続けた。

別れる時に、「あの言葉は辛かった」と言われた。

ずっと傷つけていたようだ。

自分が言い続けていた言葉を次に出会った男性から言われるなんて、ただ単純にすごい、面白いと思ったのだ。

海の返事は

「私も結婚も子供もぜんぜん考えてないから、大丈夫だよ」

海は子供が大好きだ。

でも自分が子供を持つことにはとても慎重だった。

10代後半から20代前半までは、10人くらい子供が欲しいと思っていた。

24歳の時に前のパートナーと東京で飲食店を始め、スペインに移住してお店を出すという計画を立てていた。

子供を育てるのは命がけだ。

父親を11歳の時に亡くしてから、母は女手一つで海と姉を育ててくれた。

母の苦労を知り、たくさんの愛をもらって育っている。

自分の夢を叶えながら片手間でできることではないと考えていた。

30歳を過ぎた時に、一生子供を作らないと決めた。

自分の中でモヤモヤしていたものが、決意をした途端スッキリとした。

子供を持たないのであれば、結婚は必要はない。

海にとって結婚は家族を増やすためには大切なものだが、パートナーと籍を入れる入れないはどうでもいいことであった。

「必要になったら籍を入れればいいし、入れなくても関係性が変わるわけではない」

こんな風に思っていた。

まさか自分が発した言葉が、そのまま帰ってくるとは思っていなかった。

 

義理母に言われた言葉

空と結婚をして、一緒に日本に帰り家族の顔合わせをした。

結婚式は全くやるつもりはなかったが、普段行けないような高級温泉旅館で小さな場を設けた。

そのあと、お互いの実家に数日ずつ泊まった。

その時に海は何かしでかしたようだ。

義理母を怒らせてしまった。

「あなたを〇〇家の嫁とは認めません」

これは堪えた。

自分が放った言葉の存在を思い出したのは、その数年経ったあとだ。

「結婚をしなくても、あなたのことを〇〇家の長男の嫁だと思っていますからね」

前のパートナーの母から言われた言葉だ。

「困ります。嫁だなんて思わないでください」

そんな生意気なことを言っていても、可愛がってもらっていた。

自分が本当に嫁になったら、「嫁とは認めない」と言われた。

そのあと義理母は何度も謝ってくれたが、海は腑に落ちずにいた。

「ひどいことを言ってごめんね」

なんで怒らせてしまったのかわからないままだったので、言葉では

「もう気にしていないから大丈夫です」

と言っていたが、気持ちは全然大丈夫じゃなかった。

義理母との関係もなんとなくギクシャクしたままだった。

ふとした時、自分の放った言葉を思い出してから義理母への気持ちが変わった。

「自分が言った言葉が自分に戻ってきただけだ。義理母は悪くないんだ」

素直に自分が悪かったと思えるようになった。

義理母とは数年に1度しか会えないが、今は仲良くさせてもらっている。

 

この2度の経験で、言葉は言霊ということを信じるようになった。

1つ目の言葉は相手を傷つけ、自分は傷つかなかった。

2つ目は思いっきり傷ついた。

人を傷つけたら、自分も傷つくようになっているのだ。

いつ?どのような形で?かは分からないが、”言葉”も”やった事”もちゃんと自分に帰ってくる。

若いときは人を傷つけまくり、自分も傷つくことが多かった。

今は自分の言動にとても気をつけている。

人に優しくすれば、優しさが戻ってくることももちろん体験をして知っている。