幸せなことに、大親友と呼べる奴がいる。
高校一年の時に友達に彼氏として紹介された男である。
地元から電車で30分ほどの少し都会の高校に通うことになり、まだ彼氏なんていう存在がいなかった海にとって、「都会の子はませているな」と思った。
彼らは洋楽好きで、マドンナとマイケルジャクソンくらいしか知らなかった海は、ボン・ジョヴィ、シンディ・ローパーなどの曲を初めて聴き、それから洋楽にハマった。
彼らは高校卒業後別れてしまったが、とても気が合ったその男とは今でもずっと縁が続いている。
この感覚はその男と海にしかわからないと思うが、男女という感覚は一切なく、人間同士の友情としか言葉にできない。
出会ってから四半世紀以上経ち、なくてはならない大親友だ。
こんなに感覚が合う奴はいない。
共通点はあまり見つからないのだが、あえて言うなら自然が好きということかもしれない。
スキーに行ったり、富士山に登ったり、山の中の日帰り温泉に行ったり、遊ぶところはほとんど自然の中だった。
東京にいたころ一緒にお店を営んでいたパートナーと喧嘩をし「何も聞かずにドライブに連れて行って欲しい」と、この親友Tに電話をした。
地元まで新幹線で帰り、駅まで迎えにきてくれたTは本当に何も聞かずに、その日1日ただただ山道ドライブに連れて行ってくれた。
日が暮れるころ、物凄い自然現象に遭遇した。
国道を北から南に向かって走っていて、西は大雨で東は晴れ間が出ている。
そこに大きな虹が突然現れた。
その数分後にはピンクに染まった羊雲。ため息しか出なかった。
Tと一緒に遊んでいる時は、こういう事がたまに起きるから不思議だ。
「海ちゃんの近況報告をTから聞いたよ。海ちゃんは止まらないんだね。素敵だよ。そしてパワーをもらったよ」
年に一度、Tの誕生日に近況報告をする。
そしてTの奥さんからこんなに可愛いメッセージをもらった。
10代の時にTと1つだけ約束をしたことがあった。
「お互いに付き合ったり結婚する相手は、私たちの関係を誤解しない人を選ぼう」
この頃は、異性の親友という存在を理解する人は多くないように感じていたからだ。
しかし心配する必要は全くなかった。Tの奥さんも海の夫の空も100%理解してくれている。
日本に帰った時はTの子供達も含め、一緒に食事をして家族ぐるみの付き合いだ。
「年に一度海からメールをもらうと元気が出るし、パワーをもらえるよ。ありがとう」と、Tからも返事がきた。
今でもお互いを刺激し合い、同じ感覚を共有している。
どんなに長い時間会わなくても、まったく違う生き方をしていても、根っこのところで繋がっている感覚がある。
言葉で伝えなくても、感覚で通じ合える。
今まではTの存在が当たり前だと思っていたが、こんな親友が存在するのは奇跡かもしれない。
最高の大親友だ。