出会って12年、結婚して8年の私たちアラフィフ夫婦は何かある度に家族会議を開く。
きちんと話し合いができる良い関係だ。
閉経の年ごろになった海はホルモンバランスの変化と同じく、思考も少し変化してきた。
今までは夫・空のことを応援して生きてきた。
もともと頑張っている人、自分にない才能を持っている人を応援するのが大好きだ。
空に惹かれたのも「この人を応援したい」という気持ちが大きかった。
でも応援をすると見返りが欲しくなる。
スポーツでも応援しているチームの結果がとても気になる。
結果は見返りだ。
勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。
母の大きな愛のように、見返りを求めない愛で応援するほど人間ができてないようだ。
応援されている空も無意識にも無理をしてしまう。
「こんなに応援してもらっているのに・・・」
もっとお互いに自由に何にもとらわれずに生きていきたいと思い始めた。
「ちょっと生き方を変えていいかな?今までは空がやりたいことをできるように応援してきたけど、これからはもう応援はしない。良いかな?」
「えっ。どういうこと?もう応援してくれないって」
海は今まで好きなこと、やりたいことを全てやり夢も叶えてきた。
自分の人生は大満足だ。
空にも海と同じようにやりたいことをやって夢を叶えてほしいと思い、ずっと応援してきた。
でも考えてみたら「夢を叶える」という何かを形にした状態が幸せだと思っているのは、海の幸せの物差しなだけだ。
空はまだ幸せになっていないと勝手に決め付けていただけだと気がついた。
もしかしたら今の状態が空にとっては幸せかもしれない。
そして海も今までの人生に満足をしているだけじゃなく、もっともっと幸せになれるような気がしてきた。
「これからは、空を応援するのじゃなくて、自分を応援していこうと思っているんだ。今までで十分幸せだと思ってきたけど、もっともっと幸せになっても良いでしょう?」
「もちろん!!」
「だから、空を応援する人生から一緒に生きていくっていう対等な人生にしようと思っているんだ」
こんな自分の気持ちの変化をわざわざ言わなくても良いような気がしたが、気持ちを変えると自然と態度も変わる。
とても敏感な空は、海の言動が変わるとすぐに気が付く。
今までやってきたことを止めたり、応援していた言動がなくなったら、愛情がなくなったと誤解を招くかもしれないので、自分の心の変化を素直に伝えた。
「そういうことか。お互いに好きなことをしながら一緒に幸せに生きていこう!!」
もう十分お腹がいっぱいの人生だと思っていたが、ずいぶん消化してお腹が空いてきたようだ。
もっともっと幸せになるぞ!!と思ったら、ワクワクしてきた。
なんで今までもうこれ以上幸せにならなくて良いと思ってきたんだろう???
少し生き方を軌道修正したら、目の前がパーーーっと明るくなった。
未来が楽しみだ。