夫 空の紹介

夫、空は54歳(2020年現在)日本人

空を一言で表現すると、才能豊かな器用貧乏。

なんでもすぐに出来てしまうからか?飽きっぽい。

海と出会ってからも何回仕事を変えただろう???

21歳の時に日本を飛び出し、かれこれ33年間もアメリカで生活している。

多くの日本人は、長くアメリカに住んでいるとアメリカンナイズされてしまう。

海の言うアメリカンナイズは、良い意味ではない。

日本人としての良いところを無くし、ここはアメリカだからと開き直る人が多い。

空は良い意味で日本男児だ。

海の家族からすると「空はやっぱり日本人じゃないね」ということになる。

日本よりアメリカ生活の方が長くなってしまった空の言動は、日本しか知らない海の家族からはアメリカ人に映るらしい。

空はとても繊細でまっすぐだ。

そして男の人にはめずらしく鋭い。

空には嘘はつけない。すぐにバレてしまう。

今までこんなに心が透明な人に出会ったことはない。

海はやはり素敵な人としか出会わないのだ。

 

54歳 現在の空

空の現在の職業はフライトディスパッチャーだ。

小さな航空会社に勤めている。

フライトディスパッチャーは管制官とは違う。

フライトプランを立てたり、飛行機に積む燃料の計算をしたり、乗客と荷物のバランスを測ったり、飛行機が飛ぶ前の準備をする仕事だ。

飛行機が飛び立つには、フライトプランに機長とディスパッチャーのサインが必要だ。

飛び立った後は、常に飛んでいる経路に問題がないか、天気などを確認している。

天気が急に変わった時はすぐにフライトプランを作り直し、機長に連絡をする。

飛行機や乗客に問題が起きた時には機長から連絡が入り、すぐに問題解決をしなければならない。

人の命にかかわるとても重要な仕事だ。

だからストレスも大きい。

好きでないと出来ない仕事だ。

 

フライトディスパッチャーになるには国家資格を取らなくてはならない。

空は10年くらい前から、ディスパッチャーになりたいと言っていた。

その頃の二人の生活では無理だった。

仕事を辞めて、6週間のディスパッチャーの専門学校に入らなければならないからだ。

筆記テストはどこでも受けられるが、実技の国家試験は学校を卒業しないと受けられない。

大都会に住んでいた二人は、日々の生活がいっぱいいっぱいだった。

海が一人で生活を支えるのは不可能だ。

国家資格を取ったからといっても、すぐに仕事を見つけられる訳ではない。

空が52歳の時に大きなチャンスが訪れた。

日本では99.9%、52歳からディスパッチャーになれる可能性はない。

何歳でもチャンスがあるのはアメリカの良いところだ。

カスタマーサービスで働いていた空は、ディスパッチャーになりたいと会社に相談していた。

ディスパッチャーの筆記テスト(国家試験)を受け、合格をするれば道が開けるとアドバイスをもらった。

アメリカ人でも落ちる難しいテストだ。

5ヶ月間仕事をしながら毎日8時間勉強し、一発で合格した。

証明証を会社に提出したら、急に異動が決まったのだ。

仕事として学校に行かせてもらい、学費も滞在費も会社が出してくれ、学校に通っている時もお給料まで出してくれた。

今の会社に感謝しかない。

そして空は今、飛行機のインストラクターの免許を取ろうと勉強を始めた。

飽きっぽい空だが、飛ぶことだけは飽きないようだ。

 

空の職業遍歴

空は映画少年だった。

「スーパーマン」を見てかなりの影響を受けた。

アメリカに行って映画の勉強をしたい。映画を作りたい。

21歳の時に日本を飛び出した空がたどり着いた先は、西海岸のハリウッドではなく東海岸だった。

右も左もわからない空はビザ(永住権)を取得する必要があった。

33年前は寿司シェフになってビザを取るのが一番の近道だ。

その当時の日本のレストランは、流れ者が多かった。

日本では住めなくなったような、訳ありの人も少なくない。

空が働いていたレストランの環境はあまり良くなかったように思う。

人の心が読めてしまい、人付き合いがあまり得意ではない空はレストランを転々とした。

早い人は1年で取れるビザがなかなか取れず、7年もかかってしまった。

ビザが取れたらもう寿司シェフをやる必要はない。

報道関係の会社に入った。

そこで役者をしている友人たちと出会い、小さな芝居などを作ったりしていた。

脚本も書いた。

日本の新人脚本コンクールに応募し、良いところまでいったが最終選考では落選。

数年後、空が書いた脚本に設定がそっくりのドラマが放送された。

偶然だったのか・・・

空はパイロットになりたいという夢も持っていた。

30歳を過ぎてから、プライベート(自家用操縦士)のライセンスを取った。

計器飛行のライセンスを挑戦しているときに9.11が起こり、飛べなくなってしまった。

パイロットになるには、計器飛行、コマーシャルのライセンスを取らなくてはならない。

まだまだ道のりは長いが、通っていたフライトスクールが一時閉鎖されたので仕方がない。

そして空の気持ちも飛行機から離れていった。

そんな時、豪華客船で働かないか?というオファーがあった。

そんなチャンスはなかなかない。

空は豪華客船で、世界の4分の3を周った。

豪華客船の職場では、毎日ロブスターを扱っていた。

動物好きの空は、魚には痛点はないが、ロブスターにはあることを知り働けなくなった。

船を降りた空は、昔働いてたレストランのオーナーから声がかかりジェネラルマネージャーに。

マネージメントの仕事、特にいろいろな国の人をまとめるのはかなりのストレスだ。

このころの空は、自分が何をやりたいのかを見失っていた。

人とも上手く付き合えず、仕事も長続きしなかった。

生活をしていくには、仕事をしなくてはならない。

寿司シェフに戻ったり、アメリカの高級デパートで子供靴屋の店員をしたり・・・

迷走していた。

何をやっても上手くいかない空は自分の殻に閉じこもってしまったようだった。

そして海は都会生活を離れ、田舎で一緒に農業の勉強をしようと提案した。

しかし1ヶ月半で仕事がなくなり、日本に出稼ぎに行き、アメリカの田舎町に戻って、今働いている小さな航空会社に就職した。

 

今はすっかり自分の殻を破り、大好きな航空業界で働いている。

そして、今まで諦めていた「飛ぶ」という夢をまた手繰り寄せた。

インストラクターになるのは、もちろん簡単じゃない。

空の苦手とする人付き合い、コミュニケーションがとても重要だ。

しかも英語で・・・

でも今の空はキラキラしている。

少年の目をしている。

そんな彼を見て、海は「男はいつでも少年に戻れて良いな〜」と思っている。