夫の空は54歳にしてやっと自分の中の「悩みの種(元)」を見つけることができた。
54年間ずっと生き辛く、自分はいったい何なんだろう???と思って生きてきた。
その原因が生まれた時からの自分の特性だと分かって、気持ちが70%くらい楽になったらしい。
彼の特性は、HSS型HSP。刺激探求型、超繊細・敏感な人ということらしい。
最近、流行りのようによく耳にするHSP。
人口の20%の人がこの特性を持っているらしい。
その20%のHSPの中のさらにその中の30%の人が、HSS型だという。
これは性格でも病気でもない生まれ持っての資質、良く言えば才能である。
人の気持ちや場の雰囲気を見抜く才能
人が気がつかないところに気がつく才能
感性がとても鋭く豊かである才能
あまりにも感度の良いアンテナと豊かな感性を持っているので、逆にちょっとしたことで傷ついたり、疲れやすくストレスも普通の人以上に強く感じてしまう。
まるでアクセルとブレーキが共存しているようなとても複雑な性質なので、自分も周りの人にも理解が難しく、そしてマイノリティーなので生きていくのが大変だと感じてしまうのだ。
空と出会ったのは約11年半前、2009年の9月だ。
この時の空は自分の殻に閉じこもっていた。
それをむりやりこじ開けようとして、何度も大喧嘩をした。
海はそれまでこんなに純粋でまっすぐな人と出会ったことがなかった。
人はそれなりにちょっと濁った部分を持っている。
空にはそれが全くなくピュアすぎる。だから生き辛いのだろうと思っていた。
特にアメリカの大都会に住んでいた6年半前までは、毎日がイライラの連続。
「こんなに純粋な人がよくこの街で長い間暮らして来れたな〜」
今日の友は明日の敵。
大都会はそんなところだった。
21歳の時に日本を飛び出し、それから27年間もその大都会で暮らしていた空だった。
付き合ってから何度も喧嘩し、何度も別れ話をした。
「この人とずっと一緒にやっていけるだろうか?」と思ったのは、結婚をした後、1度や2度ではない。
でも人間として、こんなに信用ができる人はいない。
海は自分のことはあまり信用していないが、空のことはとても信用している。
空の悩みは、人との関係が上手く築けないことだった。
とても敏感で人が気がつかないところも気が付き過ぎてしまうので、職場でもプライベートでもヘトヘトになる。
この特性を持っている人は転職を繰り返す。
空も何回も転職をしている。
やっと自分の夢だった職の1つに就けた今でも、何度も辞めたいと思ってしまう自分を責めていた。
「自分の心が弱いのじゃないか?」
「自分はアダルトチルドレンでは?アスペルガーじゃないのか?」
発達障害なのでは?と本気で悩んだこともある。
「海、俺はもしかしてアスペルガーじゃないかと思う。この本を読んでみて」
アスペルガー症候群の本を何冊か買って、渡されたこともある。
読んでみても、確かに当てはまることはあるがなんだか違う。
「う〜ん、なんか違う気がする」
海は普通じゃない人を好きになる傾向がある。
人から変わっていると言われている人、強いこだわりを持っている人、人からあまり理解されない人、でも性格の良い人。
だから空に惹かれたのだと思う。
それでも結婚をして一緒に生活をしていくのには大変なこともたくさんある。
そして一緒に生活をしている人がいつも悩んだり辛い思いをしているのを見ていると、こちらも辛くなる。
空とは真逆な性質を持つ海は、人付き合いは上手いし、生きていくのも上手だ。
どんなことがあっても、お気楽に楽しく生きていける。
空が悩んだり落ち込んだりしている時は、なんとか励まそうと「ポジティブ・アドバイスノート」みたいな物を作ったりもした。
海自身も変わる努力をした。
言葉遣いを変えたり、伝えたいこともタイミングを計ったり・・・
変わる前の海は「自分の方が正しい」と常に思っていたので、空に対して常に上から目線だった。
「私が空を幸せにしている」
と勝手に思っていたので、とても傲慢な態度で接していた。
キネシオロジーセラピストの友人の家に遊びに行った時に、「私の方が空に幸せにしてもらっていたんだ」ということに気づかされ、それ以来、自分を改め彼のことをきちんと尊重できるようになった。
それから一緒に解決方法を考え、どんなことが起こっても一緒にやっていこうという気持ちに変わった。
「もう本当に会社勤めは無理かもしれない」
なんとか仕事を辞めさせてあげたいが、今の海の収入だけでは暮らしていけない。
だからといってこのまま無理をして働いていたら、ストレスで病気になるかもしれない。
そうでなくても、フライトディスパッチャーという仕事はストレスが半端じゃない。
人の命に関わる仕事だ。
キャプテンとディスパッチャーが力を合わせて、乗客・乗務員の命を守っていると言って過言ではない。
飛行機を飛ばすには、キャプテンとディスパッチャー2人の同意が必要なのだ。
過酷業務+悪環境=半端ないストレス
問題が起こった時に対応できない無責任なディスパッチャーが自分のフライトを勝手に空に投げて来たり、姑息な手段で責任放棄する人もいる。
自分のフライトを見るだけでも大変なのに、毎日、毎日自分以外のフライトもこなしている。
それを上司に言って助けを求めてもなかなか動いてくれない。
普通の人は気がつかない、スーパバイザーやマネージャーの動向までも分かってしまう。
無責任なことや理不尽なことが見えてしまう空には、そういう環境で仕事をするのが辛くなってしまうのだ。
「なんとかしてあげたいな」
少しでもストレスが軽減する方法はないか?といつものように考えていた。
HSP=空 という図式が頭に浮かんだ。
もちろん当てはまることはあるが、ちょっと違うなと思うところも多い。
「空、HSPって知ってる?空はHSPかなと思ったんだけどちょっと違ったみたい」
なんとなく話をしてみた。
HSPという言葉が気になった空は自分で調べてみたようだ。
「俺はHSS型HSPかもしれない。この記事を読んでみて」
仕事中にメッセージが入った。
お昼休みに読んでみると、書いてあること全てが空に当てはまった。
そして海はさらにいろいろと調べて、あるカウンセラーのウェブサイトに行き着いた。
そのカウンセラー自身もHSS型HSPで、対処法、克服法などを研究して発信していた。
その人のブログや対処法などを読めば読むほど、空と同じ経験をしているのである。
すぐに役に立ちそうなブログを空にどんどん転送した。
読めば読むほど、すべてのことが空と共通するので面白くなってきた。
そしてとても複雑な特性を持って生きている空をとても愛おしく感じた。
「54年間もよく頑張って生きてきたね」
自然とそんな言葉が出て、彼を抱きしめた。
ずっと悩んできた自分のことが「特性・性質」だということが分かり、気持ちが本当に楽になったようだ。
良い意味で開き直れたようだ。
そしてHSS型HSPの人の考え方の癖や特徴その対処法がわかり、職場でもちょっと気持ちに変化が出てきたようだ。
「人類の6%しかいない人と出会って、その人と結婚したなんてすごくない?こんな経験したくてもなかなか出来ないよ。せっかくだからこの特性を楽しもうよ!!っていうか6%の中にいる空より、その人と結婚をして一緒にいる私の方がもっと確率は低いから、私の方が凄いかも?」
「その通りだよ。海の方が凄いよ。こんな面倒くさい俺を理解してくれて、本当にありがとう!!」
暴走夫婦はまた大きな壁を乗り越えたような気がする。
まだまだ一緒に人生を爆走できそうだ!!