ビザが取得できない 学生ビザから労働ビザ

海は35歳で語学留学のためにアメリカに移住した。

勉強なんて大嫌いだったのに、大人になってから学生をやってみたくなったのだ。

語学学校からアメリカの短大を卒業した。

知らないことを学ぶ楽しさを子供の時に知っていたら、人生はきっと違うものになっただろう。

しかし海は自分の人生にとても満足している。

「勉強をしたくなったらすれば良い」

アメリカには何歳になってからでも学べる環境がある。

 

インターンで働く

短大の卒業を控えた海は、最後の単位を取るためにインターンとして企業で働かなければならなかった。

海のメジャー(専攻)は、ホテル・レストランマネージメント。

まずはインターンで雇ってくれる場所探しだ。

気なるホテルとレストランを選び、同じ数だけの履歴書を用意した。

本来なら電話で人事にアポイントメントを取るという手続きを踏まなければならないのだが、電話の会話が苦手な海は飛び込みで自分を売り込みに行った。

4つの企業を訪ね、人事の人に会えたのは1つだけだった。

他の3つの企業には履歴書だけ預け、連絡待ちだった。

連絡があったのは2件。

結構な確率で返事がくるものだ。

1番行きたかった企業はインターンは雇わないと言われた。

2番目に行きたかったところからは連絡はなかった。

3番目の企業もインターンは雇わないとのこと。

最後の1件でやっと雇ってもらえることになった。

ホテルの中にあるレストランでウェイトレスでインターン体験だ。

もちろんお給料はなし。

アメリカのレストランのウェイター・ウェイトレスの人の収入は80%がチップだ。

基本給はとても少ない。

ラッキーなことに、海もチップをもらえることになった。

ベテランの人の50%。

それでもおこずかいにはなる。

会社からは交通費だけは出してもらえることになった。

1週間に1度レポートを書いて、学校に提出をしなければならない。

インターンの最後には企業から学校宛にレポートを書いてもらう必要もあった。

 

インターンから労働ビザの申請

会社の協力もありかなり良い成績で単位が取れ、そのまま就職させてもらえることになった。

とは言ってもビザの有効期限は1年間しかない。

1年以上フルタイム学生として学校に通うと、OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング)を使って学生ビザのまま1年間だけフルタイムで働けるのだ。

この1年間の間に、次のビザを取得するかアメリカ人と結婚をしてグリーカードを取るか、グリーカードの抽選(くじ)に当たるしかアメリカに居られる選択はない。

ビザが取れなかったら日本に帰るしかないのだ。

ほとんどの学生の場合、会社にサポートをしてもらい労働ビザを申請する。

海も会社にお願いし、ビザサポートしてもらえることになった。

個人でも申請はできるが、かなり大量の書類を作らなくてはならない。

民法に強い弁護士に頼むのが一番ビザを取得できる可能性は高い。

学生の身ではかなりの出費だ。

労働ビザを取るのには普通4年制大学を卒業しているか、専門職でないとなかなか取れない。

海の場合は短大しか卒業しておらず、しかもホテル・レストランマネージメントは専門職とはいえない。

労働ビザを申請して数ヶ月経った後、弁護士の判断でトレーニングビザに切り替えた。

それでも難しいと言われた。

海は経験がすでにあるので、今更何のトレーニングをアメリカでするのか?

それを明確にしなければならない。

綿密なトレーニングの詳細を大量の書類とともに作らなければならなかった。

最終的に弁護士に支払った金額は書類を作って申請するだけで、$11,100(約120万円以上)だった。

お金を払っても、ビザが取れる保証はどこにもない。

労働ビザもトレーニングビザも取れる可能性がないまま、海は逆転満塁ホームランを打つことになる。