「海、ウォークインクーラーに入っている卵や牛乳など、好きなものを持って帰って良いよ」
農場のマネージャーのヘザーがオファーしてくれた。
普段は牛乳など買ったことはほとんどない。
夫の空が牛乳に弱く、すぐにお腹を壊してしまうから・・・
たまにクリームシチューが食べたくて年に1、2回、空の仕事が休みの日に作ることもあるが、食べた後にすぐにトイレに駆け込む。
乳糖分解酵素が少ないために、日本人の体に牛乳は合ってないらしい。
欧米人は海藻を分解できる腸細菌がないために、海藻を消化できない。
想像を超える年月をかけて出来た体の構造は無視できないのだ。
「この牛乳だけは飲んでもお腹を壊さないんだよね。スーパーで買った牛乳を飲むとすぐにお腹が痛くなるけど」
アメリカ人のヘザーも牛乳は苦手らしい。
農場の中に先週オープンしたプロデュース・スタンド(お店)で売っているローカルの牧場の牛乳だけは飲めるらしい。
試しに1本もらってきた。
久しぶりにクリームシチューを作った。
空にはシチューの中身の野菜だけを取り出して、チーズをかけてオーブン焼きにした。
「そういえば、ヘザーも牛乳を飲むとお腹を壊すらしいけど、この牛乳だけは大丈夫なんだって。今度試してみる?」
「うん、休みの日に試してみるよ」
牛乳を買ってから1週間ほど経ってから、なんだか急にホットミルクが飲みたくなった。
海は牛乳の後味があまり好きではない。
ミルクの味が気になるので、チョコレートもブラックが好きだし、コーヒーもブラック。
でもこの日は無性にホットミルクが飲みたかった。
まずマグカップに牛乳を入れた。
分離した塊が浮いている。
「えっ、もしかしてもう痛んでいる?」
捨ててしまった。
消費期限はまだまだある。
匂いを嗅いでみたが、まったく大丈夫そうだ。
もう一度ミルクのボトルを良く振ってから注いだ。
そしてお鍋に入れ、メープルシロップを入れて温めた。
まったく嫌な後味がない。
どちらかというと薄い気がする牛乳だが、 すごく美味しい!!
ホットミルクを飲むなんて、何十年ぶりだろう???
「ヘザー、昨日の夜、寝る前にリラックスしたくてホットミルクを作ったんだ。上に浮いている塊は何?飲んでも大丈夫だよね。賞味期限はまだだし」
「あの日付は賞味期限じゃなくて、売れる最終日だよ。そしてその日付から2週間は大丈夫だって。ちゃんとミルクマンに確認したから確かだよ。塊は脂肪。本物の牛乳の証だよ。海、ゴールデンミルクって知ってる?」
「知らない。何それ」
「牛乳にターメリックとシナモンとはちみつを入れるんだよ」
アメリカで流行っている飲み物らしい。
「美味しいから、今度試してみて!!」
空の仕事が休みの日の夜、ホットミルクを試してみた。
マグカップに半分ほど。
飲んだ後、お腹がグルグルと鳴いているがお腹も痛くならなかったし、トイレに駆け込むこともなかった。
「この牛乳は本当にお腹が痛くならないね。何が違うんだろう???」
空の体は本当に敏感なので、体に合わないものを食べるとすぐに反応が出る。
何も出ないということは、体に悪いものは入っていいないということだ。
本当は日本人には牛乳や乳製品は必要ない。
カルシウムを取るなら小魚を食べるのが一番だ。
「今日は従業員割引にしてくれるって。牛乳を買う?」
空に聞いてみた。
「うん。買ってきて」
前回もらってきたときは、まだプロデュース・スタンドのオープン前。
サンプルだったのでタダでもらってこられたが、今度はちゃんと買ってきた。
この牧場で作っている2種類のチーズも買ってみた。
備えあれば憂いなし、赤ワインを買ってこないと・・・か???
ローカルで作っているものを飲んだり食べたりするのが一番幸せだ。
野菜も卵もマッシュルームも農家さんから直買いしている。
そんな環境に暮らしていることに感謝いっぱいだ!!