現在海は48歳だ。
11年前に今の夫、空と出会った。
出会った当初、お互いに結婚願望は全くなかった。
海は36歳になる歳にアメリカに移住し、日本人とはお付き合いしないとなんとなく決めていた。
「日本人男性は手がかかる。」
そんな風に思っていた。
出会いは日本食レストラン
海は留学生としてアメリカで生活をしていた。
友人の家に居候させてもらっていたが、旦那さんがアメリカ人なので純和食を毎日食べることは出来ない。
日本食レストランには困らない。
最近は日本人経営のレストランはとても少なく、なんちゃって和風レストランの方が多いが・・・
貧乏学生だったが、たまにはレストランで食事をするのが唯一の楽しみだ。
友人に誘われ、そのレストランに食事に行った。
空は日本人とアメリカ人が共同で2店舗経営しているそのレストランのジェネラルマネージャーをしていた。
とても良い笑顔で挨拶をしてくれ、好印象だった。
ある日、空が従業員をレストランショーに連れて行くという企画をした。
レストランショーには日本の企業もたくさん参加していて、日本酒や日本食の勉強会を兼ねてということだった。
レストランで働いているのは、ほとんどが中国人・台湾人のおじさん、おばさん、そしてメキシコ人、そしてアメリカ人だった。
ほとんど日本酒、日本食のことを知らない。
空に誘われた。
「もしよかったら、レストランショーに行きませんか?」
とても優しそうに見える空だったが、従業員を乗せたバンの運転は上手だが荒かった。
「この人は、一癖あるな」
ただ優しいだけの男じゃないとすぐに悟った。
車の中で、空からいろいろ質問をされた。
「なぜ学生をしているのか」「何の勉強をしているのか」
あまり人付き合いが上手くない空だが、その時の空の会話はとてもセンスが良かった。
センスが良いとは、言葉選びが上手ということだ。
空は映画や建築が好き、空を飛ぶのが好き、脚本を書いている・・・とても好奇心旺盛な男だった。
そんな空に海は興味を持った。
まさかの同郷
空は北陸出身だ。
聞いてびっくり、海の亡くなった父親と同郷だった。
しかも空の実家と海の父の実家は車で10分くらいの距離だ。
小さな頃から連れて行ってもらっていた海水浴場、デパート、そして大好きな郷土料理など、共通の話題がたくさんあった。
空の出身地の人はあまり県外には出ない。
海は東京に15年ほど住んで、10年ほど飲食店を経営をしていたが、空の出身地の人とは出会ったことがない。
海のいとこ達もほとんど、県内に就職をしている。
アメリカの東海岸のレストランで、まさか父の実家の近所の人と出会うとは・・・
「父が会わせてくれたのかな?」
そんなことを思うようになってきた。
出会いは偶然じゃなく必然?
出会った頃の空と海は喧嘩ばかりだった。
二人とも人生の絶不調の最中にいた。
2週間に1度くらいの間隔で会うようになっていたが、会うたびに喧嘩をして、会うたびに別れ話をした。
性格も真逆で、趣味も合わず、お互いのことが全く理解できずにいた。
今となっては、お互いの足りない部分を補うための相手だったと理解できる。
お互いにかなり影響しあっている。
自分の足りない部分を克服している。
人間的にかなり成長している。
お互いに刺激しあい、今では趣味も共有できることが増えてきた。
夫婦になると似てくるのか?
今ではほとんど喧嘩をすることもなく、お互いを尊重し、お互いを褒め合い、認め合い、高め合っている。
この出会いは偶然じゃなく必然だった。
そうであれば、何があってもこれからも一緒にいるのだろう・・・