一人で母の介護をしてくれている姉からの連絡が突然止まった。
2ヶ月ほど前に「帰ってきて貰えないかな?」と言われたが、帰らなかった。
帰れるようなら帰っている。
まだ安全に日本に帰れるという気がしない。
日常生活をしていてコロナに感染するとは思わない。
そしてただ日本に行くだけなら、全くもって大丈夫だという思いはある。
しかし、2年半前に大事故を起こし障害者になり、その1年後に脳梗塞を起こし体のあらゆるところに麻痺が残っている母の元に帰る勇気がまだ持てない。
運動機能はもちろんのこと、呼吸器系もかなり弱くなっている。
少しの変化にも耐えられない体になっている。
万が一、母に感染させてしまったら・・・
コロナに限らずいろいろなウィルスは存在する。
発病しなくても体の中に存在している可能性があり、自分がまったく無症状状態でも人に感染させる可能性はある。
日本に帰国する人でコロナの感染者のほとんどは空港で感染していると思っている。
自分がウィルスだとしても、空港ほど人の体に入り込むのに簡単なところはないと思う。
それでも日本に帰るか?
海外に住んでいる人はみないろいろな思いがあると思う。
海が「今はまだ帰れない」と言ったことで、姉のストレスがマックスになり、日常生活に支障が出るほど精神的に参っていた。
何が原因なのか?姉なりに考え、「海に頼りすぎていた。一人で介護をするという覚悟ができていなかった」ということに気がついたようだ。
姉は箱入り娘だ。
50歳を過ぎるまで何不自由なく、母にほとんどの家事をしてもらい独身貴族を謳歌していた。
姉からしてみれば、海の方が自由気ままに暮らしていると思っているだろう。
家賃の心配も家事もせず、自分の時間を100%自分で使えることが当たり前に思っていた姉は、どれほど恵まれた環境にいるかに気がついていなかった。
しかし自分のことを振り返り、自分の甘えや覚悟のなさに気がついてくれた。
「もう海のことはいないものとして、母と二人で生きていく」
そう覚悟を決めたら、心が軽くなったようだ。
いつでも「なんで自分ばっかり・・・」「なんで自分だけが母の面倒をみなくちゃいけないの」と思っていたから、海が帰らないことにイライラしていた。
姉は白か黒、0か100という物の考え方をするひとだ。
グレーや50%という選択はない。
「一人で母の面倒をみる」と覚悟を決めたということは、海には決別宣言だ。
母に何があってももう連絡をしないという覚悟らしい。
それで姉の心が軽くなったのなら良かった。
ほんの少し寂しい気持ちはあるが、スッキリした。
性格、価値観、生き方もまったく違う姉とは、母がいるから繋がっているような気がしていた。
母がいなくなったら、今までよりも疎遠になるだろうと思っていた。
なぜなら、海自身が姉と一緒に過ごすことが心地よくないからだ。
かなり我慢をする。
言葉をかなり気をつける。
ものすごく気を使う。
家族じゃなかったら、仲良くならないタイプの人だ。
母と一緒で、とても愛情の深い姉は「家族の絆」を人一倍大切にする。
それを壊すこともないので、妹として家族の一員を担っていた。
ちょっと時期は早くなったが、姉が距離をおいてくれたのでとても気が楽になった。
あとは母との関係だけを考えればいい。
母に手紙を書いた。
帰れるようになったらすぐに帰ることを伝えた。
なぜ今帰らないのかも伝えた。
母のことは大好きで、とても尊敬をしている。
姉との関係が薄くなっても、母との関係は変わらない。
姉には申し訳ないが、姉の都合ではなく自分の判断で日本に帰れるようになって良かった。
それぞれに家族に対しての想いは違う。
愛情の示し方も違う。
世の中的にはとてもネガティブなコロナ騒動だが、いろいろなことに気がつかせてもらい、いろいろなことを勉強することのきっかけになったコロナちゃん。
ある意味感謝している。