アメリカの大農場でも農業は難しい!!

「他の農場から買ってきた野菜を売って儲けがでるの?」

海はアメリカの東海岸で6代続く大きな大きな農場で働いている。

5年前までは大都市に住んでいたが、農業の勉強がしたくて夫の空を説得してこの地に引越しをしてきた。

働けば働くほど、農業の難しさを痛感している。

気分がスッキリしない畑の仕事

海の働いているファームは、水耕栽培、露地栽培、そして日本では馴染みは薄い、芝の栽培もしている。

オーナーは同じだが、芝は違う会社登録で運営している。

この地では、芝だけの農場もたくさんある。

かなり収益が良いビジネスのようだ。

水耕栽培のグリーンハウスでは、1年中Bibb Lettuce(サラダ菜)がメインで、他10種類ほどのレタスとスプラウトや豆苗などを育てている。

露地栽培のメインはやはり夏だ。

チェリートマトししとうがメインで、ズッキーニや数種類のスクウォッシュなどを育てている。

今年は雨が多かったので、スクウォッシュの中で一番売れ筋のバタースクウォッシュの収穫が悪かった。

今の秋の終わりは、人参と色とりどりのカリフラワーの収穫と夏の畑の片付けがメインだ。

 

今日はなんだかスッキリとしない仕事内容だった。

水耕栽培のBibb lettuceの成長が間に合わず、隣の州の農場から買ってきたものをパッケージし直す作業だった。

約370箱、4440株のレタスを8人がかりで約3時間半の作業だった。

契約している大きなスーパーマーケットに卸す分だ。

そしてその作業が終わったら、今度は外での作業。

半端じゃない量のさつまいもの泥を落とす作業だった。

「泥を落としたものを注文しているんだけど、表面だけ綺麗にしてあって、下は泥だらけなんだよ」

「えーーーこのさつまいもも他の農場から買っているの?」

「他の農場から買っても、儲けはあるの?」

あるらしい。

自分で商売をしていた海は、経費やコストなどをすぐに考えてしまう。

この商売は大きな農場じゃなければ成り立たない。

人件費も決して安いわけじゃない。

海の時給も悪くない。

自分たちで育てたものじゃない野菜をパッキングするのは、なんだか気分があまり良くない仕事だ。

凄腕マネージャー

マネージャー兼セールスをやっているティムはとてもやり手だ。

大きな仕事をどんどん取ってくる。

いくらグリーンハウスといっても、天候や気温によってレタスの成長は違う。

今回みたいに成長が間に合わない時もあるし、逆にオーダーが少ないのに、レタスの成長が良くて収穫のタイミングを迎えてしまうこともある。

そういう時は、ティムはすぐに新しい契約を取ってくる。

すごいとしか、言いようがない。

とても審査の厳しいと言われている、ヘルシー志向の高級スーパーマーケットにも3年前から卸している。

その代わり毎年厳しいインスペクションに通らないと、契約は打ち切りだ。

毎年クリスマスパーティーの時に1年間の売り上げ、純売上高の発表がある。

いつもこの時期は日本に帰っているので、これまで1回しかパーティーに参加していない。

参加した年の売り上げは、日本語でも数字の苦手な海には、桁が大きすぎて良くわからなかった。

来年の夏には2000万円以上かけて新しいグリーンハウスを建設予定なので、儲かっていることは確かだ。

オーナーとマネージャーは同級生だ。

二人三脚でどんどん農場を大きくしている。

 

あまりにも大きな農場で働いているので、農業の勉強にはあまりならない。

海よりも年下だが、とても人格者のオーナーから学ぶことは沢山ある。

トップが良いと、ビジネスも働く環境もとても良い。

これが海がこの農場をやめられない理由の1つだ。