苦手なことの一つに、3レターを覚えることがある。
たとえば、CEO。
これを覚えるのに半年くらいかかった気がする。
「COEだっけ?ECOだっけ?エコになっちゃう」
こんな感じで、きちんとchief executive officerと覚えれば良いのだけど、ただ3レターだけを覚えようとするので、意味がわからずに順番がわからなくなってしまう。
農場で担当しているCSA(Community Supported Agriculture)も担当するまで覚えられなかった。
夫の空は航空会社で働いている。
入社当初はカスタマーサービスで働いていた。
働いているのはとても小さな空港なので、カウンターでチェッキングの仕事からゲートの案内、荷物の積み入れ、飛行機の手旗信号案内など、いろいろな仕事をしなくてはならなかった。
その職に就くには、テストに通らなくてはならない。
そのうちの一つが、空港の3レターを覚えることだ。
成田空港ならNRT、NYはJFK、ハワイのホノルルはHNL・・・
「海もうちの会社でパートタイムで働けば?」
ずいぶん前だが一度空から言われたことがある。
ちょっとやってみたい気はしたが、絶対にテストに受からない自信があったのでやめておいた。
そんな海でも一回で覚えられたのがTLC。
農場のマネージャーのヘザーから教わった。
オーナーのアンディのお父さんの家の敷地にイチゴ畑がある。
今はシーズンの真っ只中で、毎日のように真っ赤に熟した苺を収穫している。
甘く熟した苺は2日もするとすぐに痛んでしまう。
ファーマーズマーケットに持っていくために、痛んだものを捨てる作業をしていた。
「TLCだね」
とつぜんヘザーがこんなことを言った。
「え、何て言ったの?」
「TLC、Tender Loving Careだよ。苺は傷つきやすいからね。人に対しても使えるよ」
すぐに海の作業台の目の前にあるホワイトボードに書いた。
「良い言葉だね」
Tender 柔らかい、優しい
Loving 愛のある
Care お手入れ
とても心がほっこりとする。
言葉をきちんと覚えたら、一回で覚えられるものだ。