「週末に空と海に手伝ってほしいことがあるんだけど・・・」
農場の同僚ローラから頼まれたことは、中古で買ったグリーハウスの解体だった。
ローラの家から30分のところに住んでいる人から買ったらしい。
「お母さんと弟と私たち5人で作業すれば、何とかなると思うんだ」
高さが20ft(約6m)のグリーンハウスの解体だ。
土曜日の朝9時半にローラの家に集合だった。
初めて会う弟のベンはサングラスをしていて、寡黙でシャイだった。
今まで海が会ったアメリカ人の中では珍しいタイプで、声がとても小さい人だ。
見た目は取っ付きにくそうだったが言動はとても優しくて、作業がとてもやりやすい。
70歳のお母さんはとても小さな人だったが、工具を使うのも作業するのも一番手慣れている。
みんなに指示を出して、一番動き回っている。
台風対策でハウスのビニールが飛ばないように、スチールの枠組みの上にさらに木枠が打ち付けてある。
いろいろなサイズの大量のネジを、しかも違う角度で止めている。
「何て複雑なの!!グリーンハウスはもっと簡単な構造なのに・・・」
お母さんは文句を言いながらも、着々と作業を進めている。
ローラは5人でやれば2時間くらいで終わるだろうと思っていたらしい。
10時から始めた作業だが、お昼になっても3分の1も終わっていない。
「今日中には無理でしょう」
あまり力になっていない海は心の中で思っていた。
「もうお腹すいた。何か食べないとこれ以上作業できないよ!!ランチブレイクにしよう」
お母さんは工具が盗まれないように、現場に留まるからとテイクアウトをローラに頼んだ。
4人で食べに行ったのは、シーフードレストランだった。
海は「簡単な軽いもので」と言ったのでファーストフードで良いと思っていたが、ローラは外食をするときにファーストフードというチョイスはあまりないようだ。
ローラとは5、6回外食をしているが、彼女が選ぶところはいつもきちんとしたレストランだ。
ランチなのに薄暗い店内で、かなり大賑わいだった。
「大丈夫?見える?」
ローラが心配してベンに聞いた。
ベンはサングラスをしたままだった。
彼はかなり目が悪いようで、サングラスは度付きだった。普通のメガネを置いてきてしまったらしい。
海がトイレから戻ってくると、ベンはサングラスを外していた。
とても優しい目のイケメンだった。
「キアヌ・リーブスに似てない?なんとなく喋り方も似てるよね」
空が言った。
誰かに似ていると思っていたが、そう言われてみたら若い頃のキアヌ・リーブスに似ている。
それを本人に伝えると喜んでくれた。
ランチでの会話でベンともさらに打ち解け、午後の作業がますますやりやすくなった。
ローラは途中で帰っていいと言ってくれたが、「乗りかかった船だ、最後までやろう」と空が言った。
「ガッテンだ!!」
結局すべての作業が終わったのは午後7時過ぎだった。
家に帰ったら8時過ぎ、夕食を食べたのはいつもなら寝る時間の9時だった。
体は疲れていたが、達成感で気分は爽快!!
これからローラの家族とは長いお付き合いになりそうだ。