海の周りにいる人たちは、心配性である傾向が強い。
母、姉を筆頭に、夫の空も心配性だ。
今働いている農場のオーナー夫妻のマットとステファニーも。
そして今一番親しくしている友人のローラ。
まったく心配事がない海の周りには、磁石のように自然にこのような人たちが惹きつけ合っているように感じる。
ローラは友人でもあり、土地を貸してくれている大家さんでもある。
彼女の土地で今年の4月から自分の畑を始めた。
協生農法という手法を使って、樹木、草花、野菜を混成させて生態系を構築しながら、出来た自然からの恵みを分けてもらうという、楽しい畑を作っている。
野菜の少ない今の季節はお花畑のようになっている。
夏が終わってから急に生えてきた雑草と呼ばれる草たちも、元気にたくさん茂っている。
そんな雑草も植物として観察したり、どんな種類なのかを調べたりしている。
ローラは海よりもとても詳しい。
畑の周りに生えている草の写真を撮って、聞いてみた。
アメリカの雑草と日本の雑草は種類が違ったり、名称が違ったりするので、なかなか探すのが難しい。
「2枚目の写真の草は、spurge(コニシキソウ・小錦草)と呼ばれていて、毒草だよ」ローラ
「どうしたら良い?刈った方が良い?」海
「そうだね。排除しないとね」ローラ
「畑の周りのドライブウェイにいっぱい生えているから、草刈機で刈ってもらっても良いかな?」海
こんな会話の2週間後にローラから連絡が来た。
「私の方にはあまり生えてないよ。海の方にはどれくらい生えているか分からないけど。今は草刈りをしたくないんだ。今生えている羊の餌になる冬小麦も一緒に刈っちゃうことになるから」
「毒草でも私はまったく気にしないから、そのままでも大丈夫だよ」
ローラは2ヶ月前から飼いだした4頭の羊のことが心配でしょうがない。
つい最近、一番小さな子羊が極度の貧血で病院に連れて行ったばかりだから、余計に心配なのだ。
羊のことをあまり心配していない海のあっけらかんとした返信に、ローラはちょっとイライラしている感じが文面でわかった。
ローラの土地は広すぎて、手作業でコニシキソウを排除するなんて無理だ。
海の農法では、どんな草でもその土地には必要だという考えなので、人間にとっては毒でも、ここにずっと住んでいる動植物には必要な草だと思っている。
しかも日本のサイトでやっと見つけたコニシキソウは、素手で触るとかぶれや痒みが起こる可能性があるというくらいの毒性だ。
実際にそんな草だとはつゆ知らず、空と一緒にコニシキソウの上に座ってランチ休憩を取っていたが、べつに何事も起こらなかった。
しばらくしてからまたローラから連絡がきた。
「どうやってコニシキソウを排除すれば良いか調べたら、一番最初にヒットしたのが、羊や山羊を放牧して食べさせろって書いてあった。心配し過ぎだったよ。彼らは強靭な胃袋を持っているらしい(笑)」
一件落着。
心配性の友人がいると、海が全く気にしないことまで調べて教えてくれるので勉強になる。
自分とは違う特性をもっている人たちが周りにいることは、とても幸せなことだ。