雑草を食す

5月に入ってもなかなか暖かい日が続かず、農家泣かせの天候だ。

農場の同僚のローラ曰く、例年でいうと3月のような陽気らしい。

雨や強風が多く、気温も低い。

それでも寒さに強いほうれん草は、元気に育っている。

ほうれん草の収穫は、メキシカンの同僚にとってはあまり好きな作業ではないらしく、

「海、ほうれん草が大きくなって採り頃だぞ」

毎日のように言われる。

チームで行動するメキシカンと違って、海は一人で収穫をする。

広大な畑のほうれん草を収穫するのに、何日かかるかわからない。

 

「海、今日は何をする?」

小さなチームのフェルミンは、今日は一人仕事みたいだ。

「ほうれん草の収穫を一緒にしない?」

いつもなら嫌がるのに、その日は仕事がなかったらしく、一緒に行ってくれることになった。

午前中の3時間でやっと1列終わった。

まだ5列ある。

午後も一緒に収穫に行った。

しばらくして、違う部署で働いているフェルミンの兄のアルフォンソが来た。

自分の仕事が終わって手伝いに来てくれたのかと思ったら、ほうれん草の周りに生えている雑草を摘んでいる。

「この雑草を食べるの?」

「これはほうれん草よりも美味しいよ。食べたことないの?」

調べたらシロザという植物だった。

ウィキペディアでは、道端や荒地などに生える雑草と書いてある。

そしてバングラデシュでは日常的な野菜との記載もあった。

アルフォンソは大きなゴミ袋いっぱいに摘んでいった。

海も試しに少しだけ持って帰った。

至る所に生えている、生命力の強い植物なのでエネルギーも高いはずだ。

 

茎が硬いので、軽く熱湯にくぐらせてよく絞ってから、ニンニクと一緒に炒めた。

味がわかるように、味付けは塩だけ。

絞った時に灰汁がかなり出たので癖が強い野菜かなと思ったが、ほうれん草よりも癖がない。

しかも美味しい!!

お浸し、胡麻和え、味噌汁、炒め物、何にでも合いそうだ。

手入れをして育てる野菜よりも、何もしないでどこにでも生える雑草の方が美味しいなんて・・・

物価が高騰している今、周りを見渡すとただで食べられる美味しい植物が見つかるかもしれない。

今こそ、植物を勉強するチャンスかも?